(1) Storm Cat 系の 問題点を深掘りする
前回は、ブリックスアンドモルタルの祖父 Storm Cat の特長について調べてみた。
前々回の Storm Bird のところでも少し触れたが、 Storm Bird → Storm Cat の 問題点として、芝馬は早熟で早枯れの傾向にあることを指摘した。
この点を踏まえて、今回は ブリックスアンドモルタルの父 Giant’s Causeway とその産駒の特徴を分析するなかで、この懸念が現実のものとなるか否かを深堀りしてゆきたい。
(2) Giant’s Causeway は短・中距離馬
まず Giant’s Causeway の現役時代の解説を少し加えてみたい。
競走成績は13戦9勝2着4回のパーフェクト連対である。
重賞競走の成績は以下の通り。
競走期間は2~3歳で、3歳11月に挑んだBCクラシック(G1)で2着に敗れた後、引退した。
したがって、早枯れ云々の検証はできない。
というよりも、特にアメリカの馬は、2歳、3歳で結果を出して早々に引退することが多い。
したがって、本来、早熟の血統が選別されてきた。
仮に古馬になっても現役を続けてレースを使い続ければ、負ける機会も多くなるだろうし、早枯れと言われて種牡馬の価値が下がる。
だから、早熟と早枯れはコインの表と裏の関係になる。
Giant’s Causeway がダートに出走したのレースはBCクラシック1戦のみで、ダート適性についても基礎となるデータが少ない。
重賞競走での平均優勝距離は1675m。1400mから2000mまでをこなす短・中距離馬という適性になる。
ブリックスアンドモルタルの競走成績も下に掲げた。
重賞競走での平均優勝距離は 約1971m。
父の Giant’s Causeway はマイルよりの適性を示したのに対し、 ブリックスアンドモルタル の適性は2000mに近い中距離馬である。
芝1600mの重賞G3サラナクS(N.A)では3着に敗れていることから考えると、距離は短距離よりも2400mまでの長距離にシフトしたほうが好成績を収めると陣営が判断し、マイル以下の路線を選択しなかったのだろう。
(3) Giant’s Causeway はワールドワイドの偉大な種牡馬
次に、 Giant’s Causeway の種牡馬としての成績を見る。
G1優勝馬32頭、G2優勝馬23頭、G3 優勝馬40頭 で合計100頭!
Giant’s Causeway の 父 Storm Cat はG1馬が35頭、G2馬が28頭、G3馬が46頭で、合計109頭に匹敵する重賞馬メーカーである。
サンデーサイレンスとディープインパクトの父仔も国内で重賞優勝馬を量産したが、この凄さをワールドスケールに広げたのが、 Storm Cat と Giant’s Causeway 父仔というように語ると、この父仔の偉大さを理解してもらえるだろう。
Giant’s Causeway は産駒が日本にも導入されている。
出走頭数/勝ち馬頭数では、81/31 となり、EIは1.93である。
産駒で日本の重賞を優勝した馬は4頭。
私の「成功種牡馬」の定義では、
①産駒のJRA出走頭数が100頭以上で、産駒の重賞優勝頭数が4頭以上
②ただし、そのうち1頭以上はG1優勝している。
Giant’s Causeway は産駒が 100頭 未満という厳しい条件の下で、 この基準をクリアしているので、成功種牡馬に含まれる。
重賞優勝馬はいずれも牡馬で、 Giant’s Causeway 自身の重賞競走での平均優勝距離(1675m)に対応するように、1400mと1600mが強い(各2勝)。
アスターペガサスは函館2歳ステークスを最後に以降は勝ち星がない。
これは明らかに早熟&早枯れだが、他の馬には早熟であっても早枯れという評価は当たらない。
代表産駒のエイシンアポロンは2歳時の重賞を勝っているが、4歳の古馬になってからG1マイルチャンピオンシップに優勝している。
この Giant’s Causeway の産駒、 ブリックスアンドモルタルの 日本での成否を考えるとき、 Giant’s Causeway の産駒 で日本に導入された種牡馬の成績を調べるのが手っ取り早い。
次章で、その詳細を解説する。
(3) Giant’s Causeway の産駒 種牡馬は日本で不発
合計15頭が該当する。
このうち、重賞優勝馬は2頭。
ライトオンキュー(牡、父、Shamardal、G3京阪杯[芝1200m])
シヴァージ(牡、父、First Samurai、G3シルクロードS[芝1200m])
いずれも芝1200mの重賞を制している。
両馬の父 Shamarda (出走数26頭)と First Samurai(出走数6頭) はわずかな産駒数で結果を残しているので、優秀な種牡馬と言っていい。
ただ、なにしろサンプル数が少ないので、統計的に産駒の適性や傾向を確定的に語ることは控えたい。
確実なことが言えるのは、100頭以上が日本で出走しているエスケンデレヤだけである。
この馬は110頭出走で勝利頭数32
EIは0.44
産駒のうち獲得賞金が一番多いのがスズカデレヤ(牡)の、6,745万円。
28戦3勝で、3歳以上2勝クラス[ダート1800m]を勝てたのがやっと。
どのデータを見ても、 エスケンデレヤは失敗種牡馬である。
産駒の芝・ダートの成績は以下のようになる。
成績が完全にダートに偏っている。
成功種牡馬になるためには、芝特化か、芝とダートの兼用が望ましい。
ダート競走のJRA重賞は数が限られている上に、賞金額も低い。
そのうえ、ダート血統の種牡馬はうじゃうじゃいるので、この群雄割拠を勝ち抜くのは難しい。
エスケンデレヤ の失敗は陥るべくして陥った失敗だ。
ここまでをまとめると、 Giant’s Causeway の産駒 は種牡馬として数多く日本に導入された。
というものの、種牡馬の成績は惨憺たるもので、この状況を冷静に眺めてみると、 ブリックスアンドモルタルの 前途は極めて厳しい。
【Giant’s Causeway産駒を徹底検証する】 ブリックスアンドモルタルの疑問 ⑤ー4 終わり
次回は連載の最終回で、 【決断/ブリモルに行くべきか、行かぬべきか】 ブリックスアンドモルタルの疑問 ⑤ー4
になります。
【攻略法】ブリックスアンドモルタル産駒
https://note.com/soumanosuikoden/n/n6d70fac97395
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