【安田純平とはこんな人】書評:ルポ 戦場出稼ぎ労働者 (集英社新書) 安田純平著

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ジャーナリストの安田純平が3年以上の長きに渡ってシリアの過激派組織に拘束されていたのを解放されたことがニュースで列島を駆け巡った。
私はこの人の本を読んだことがあり、その現場主義の姿勢に共鳴していたから、この朗報は心から歓迎した。
そこで、まだ安田純平を知らない方に、彼の取材法と考え方を知ってもらうため、私が以前書いた書評をここで再掲させてもらうことにします。

それでは、以下が書評です。

筆者の名前に聞き覚えがあるのは、2004年4月、イラクを取材中に現地の武装勢力に拘束されて、
国内で自己責任論を引き起こした人物であるからであった。
この自己責任論の欺瞞については、本書や「誰がを『人質』にしたのか」(PHP研究所、2004年)の中で
筆者が詳述しているので、そちらを参考にしてもらいたい。

筆者はイラク戦争の激戦地であるイラクのディワニヤで基地建設現場や民間軍事会社事務所などイラク軍関連施設で
コックとして働きながら、戦時下の戦況やイラク人などの現地の戦場労働者の実情や、彼らのイラク戦争に対する戦争観など
生の声を多く取り上げた。本書は戦争の一面をリアルに克写した迫真のルポルタージュである。

日本国内の大手新聞社は危険な現地に自社の記者を派遣しない。
だから、大手紙の紙面を読んでいても、自分の目で見て、肌で感じる、空気が伝わらず、戦争に反対する論調でも
安全な場所から発信される、「べき」論の理想論が多く、違和感をぬぐえない。
したがって戦争記者や戦争カメラマンの視点で見た戦争の現場を知るには、
安田氏のようなフリージャーナリストの取材に頼らざるを得ない。
彼らは、自らの生の体を危険に晒して、命を賭けてより戦場の現場になるべく近いところに身を置く。
したがって、拘束される危険性も増す。その献身的な情熱に敬意を表したい。

本書については、安全なところでぬくぬくとしている私の論評よりも、
こうしたレビューではご法度になることを承知で
本書で一番グッときた部分を直接引用することで、魅力を伝えたい。
2004年に安田氏をイラクで拘束したのは、
地元の町民や農民などの一般人と彼らを指揮する元軍人や元警察官などで、
拘束中に近所から子どもなどが見物に来ていたという。こうした経験を踏まえて書かれたテロリスト論を以下紹介したい。

「テロリスト」ならば、周囲も含めて無条件に殺してよいのが「対テロ戦争」だ。その「テロリスト」とは誰なのか、という問題は「対テロ戦争」取材の最重要テーマである。
「テロリズム」とは、『大辞泉』によれば「政治的目的を達成するために、暗殺・暴行・粛清・破壊活動など直接的な暴力やその脅威に訴える主義」とされているが、具体的な定義はされていない。「対テロ戦争」を推進している日本の外務省ですら、ホームページに「国際的なテロの定義というものはない」と明記している。
本来、いかなる凶悪犯であれ、裁判を行い、証拠を示し、反論の機会を与え、日本ならば二度まで異議を唱えることも認めた上で、本当にその人に対して必要であると判断されなければ軽微な刑罰すら与えることはできない。罰を与えて人権を制限するためにはそれだけの手続きが必要なのだ。しかし、「テロリスト」にはそれを必要とされておらず、政府側が疑いを抱けばそれで殺してよいことになっている。その定義すらされていないということは、事実上、政府が誰に対してでも当てはめて自由に処刑できるということだ。逆らう者は「テロリスト」として殺せばよい。「対テロ戦争」の最大の意義はこれである。
米軍に家族を殺され、何の証拠も示されずに突然拘束されて拷問・虐待されたイラク人と、彼らを支える地元住民が「テロリスト」とされていることを、拘束という自らの体験で確認したとき、「テロ」という曖昧で不気味な言葉を使うことによって人を人でなくしていく「対テロ戦争」の本質を見ることができた。「テロリスト」という言葉を使うということは、無条件に殺されてしかるべきだ、と判定を下すに等しい。人として、報道に携わる者として、私は「テロ」「テロリスト」という言葉を使うべきではないと拘束経験を通して改めて確認した。

安田氏の定義に反するが、
イラクとシリアのISIS(イスラム国)は「テロリスト」集団とみなしてもさしつかえがないと私個人は判断している。
ただ、もし今後アメリカなどの有志連合がイラク・シリアに地上軍を派遣した場合、
多くの住民が巻き添えを食って、または「テロリスト」とみなされて殺されるだろう。
いや、すでに有志連合は空爆によって多数の無辜の住民を殺している。
「テロリスト」という言葉は戦時において人権を守る多くの国際法が適用されない人々を意味する。
なぜなら、国際法は国家と国家との間で交わされたものであり、西欧諸国がISISを国家と認めない以上、
この戦争を通して発生する犠牲者の人権は無きに等しいからだ。
こうした議論をすると、必ず起こる反論が以下のようなものだ。
「お前はISISを擁護している」「お前はテロリストの味方か」
そうではない。私が言いたいのは次の一点だけだ。

「対テロ戦争」の大義名分の影に隠された多くの国家を持たない一般人(パレスチナの人たちも含む)の犠牲者の存在から私たちは目を背けてはならない。

本書はイラク戦争当時のものであるが、現在のイラクやシリアで何が起こっているかを知る上で、
参考になる重要資料であることは疑いない。

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