(1)はじめに
社台・サンデーサラブレッドクラブ2020年募集馬リストのなかで、注目クロスを持つ馬を取り上げて解説をしている。
前回までは私が個人的に注目する血統として、ヌレイエフのクロスを持つ馬のリストを作成して、ヌレイエフの血がいかに日本の競馬に合うかの根拠を書いてみた。
今回はサンデーサイレンスの3×3の強いクロスを持つ馬について取り上げてみたい。
4×3、または3×4のインブリードは奇跡の血量と呼ばれる。
サラブレッドの血統の歴史は近親交配を繰り返して発展してきた。
これは優れた競走能力を伝達する一方、気性難や虚弱体質を持つ馬が生まれる要因ともなる。
いわば両刃の剣といってよいが、そのちょうどよいバランスが4×3(3×4)の絶妙の配合で、これは競走馬の交配を行う場合の標準的な血統理論で称揚されてきた。
それでは、これよりも血の濃い3×3のインブリードを持つ馬のパフォーマンスはどうだろうか。
特に近年、サンデーサイレンスの3×3の強いインブリードを持つ馬がチラホラ登場してきて、なかには重賞を勝つ馬も現れた。
今年(2020年)の社台・サンデーの募集馬にもサンデーサイレンスの3×3がいる。
今回はその1頭、サンデーサラブレッドクラブ募集予定馬のシーディドアラバイの 2019を取り上げてみたい。
(2)シーディドアラバイの 2019の血統評価
以下にシーディドアラバイの 2019の5代血統表を掲げる。
シーディドアラバイの 2019の父サトノアラジンは祖父がサンデーサイレンス。
母のシーディドアラバイの 祖父もサンデーサイレンスで、見事にサンデーサイレンスの3×3のクロスを形成している。
母シーディドアラバイは2004年生まれ。22戦1勝 [1-1-2-18]で競走成績では見るべきものはない。
その母がロココスタイル。祖母はサクラハゴロモ。
このサクラハゴロモはG1スプリンターズステークスを連覇したサクラバクシンオーの母でもある。
サクラバクシンオー(驀進王)とはよくつけたもので、現代の日本競馬の名スプリンターで、キタサンブラックの母父としても有名だ。
キタサンブラックは初めはこの母父バクシンオーの血から、菊花賞は距離が持たないと言われていた。
ところが蓋を開けてみれば菊花賞はリアルスティールをクビ差押さえて優勝。
その後も天皇賞(春)連覇、ついでに秋天も勝ち、ジャパンカップ、有馬記念、大阪杯とめぼしい古馬G1レース総なめにした。
競走成績からキタサンブラックはステイヤーといってよいが、かつてのメジロマックイーンのようなスタミナタイプが席巻した長距離レースでも、昨今は勝つにはスピード値が必須となった。
母系に優れたスピード血統の血が入ることは、レースパフォーマンスを上げるには欠かせない。
こうした意味で、一族にサクラバクシンオーを持つシーディドアラバイの 2019は活躍の可能性を大きく秘めている。
しかし、やはり気になるのはサンデーサイレンスの3×3という強いインブリードを内包する点で、これをどのように評価するか。
この問題を考えるために、まずこれまでサンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬にどのような馬がいて、どんなパフォーマンスを示したのかを検証することから始めてみたい。
(3)サンデーサイレンスの3×3のクロス
私の調べた範囲内の馬を表にした。
サンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬は上記の表に掲載した以外にもまだいるだろうが、すべての馬を調べる機会がないので、ご了承ください。
それでもまだ全体的にサンプル数が少ないので、確定的なことは言えない。
今回は2点だけ書かせていただきたい。
サンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬はノットフォーマルやトラストのように重賞を勝つ馬が現れる一方で、未勝利に終わる馬もいる。
両極端の結果に傾きやすい。
また、ノットフォーマルやトラストの2頭に言えることだが、早熟に出る。
ただ、表の一番上にあるケンブリッジサンだけは指摘した2点については例外となる。
やはりサンプルが少ないから断定的なことを言うのをためらう。
このテーマは引き続き追いかけていきたい。
「サンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬をどう考えるか」という特集記事をNOTEの「1口馬主入門」のほうに書く予定です(現在準備中、後日お知らせいたします)。
よろしかったら、参考にしていただけるとありがたいです。
(4)まとめ
シーディドアラバイの 2019が牝馬であるところがネックとなる。
3×3のクロスなどという配合を持つ牝馬に対する評価を考えると、ブリーダーの狙いとしては繁殖用という結論に落ち着く。
インブリードの強い牝馬はここに名馬の血を結集させて次の世代へとつなげる結節点となる。
このように考えると、サンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ本馬に手を出さないほうが無難、ということになる。
しかし、私たちは凱旋門賞などG1を10連勝(重賞競走11連勝)したエネイブルという馬を知っている。
このエネイブルはサドラーズウェルズ[Sadler’s Wells]の3×2というきついインブリードを持つ馬としてつとに有名である。
問題は「エネイブルが活躍しているからだいじょうぶ」と取るか、エネイブルのような馬は例外中の例外で、だからこそ歴史的名馬と呼ばれるのでエネイブルはカッコにいれる(つまりカッコに入れて考えない)のが正解か。
やはり、シーディドアラバイの 2019をエネイブルと並べて語るのにはそもそも無理がある。
インブリードの濃い配合を持つ牝馬はただでさえナイーブなのにさらにいっそう神経過敏になりレースに向かないと受け取るのがふつうだろう。
ということで、そろそろ結論を出すときだ。
強いインブリードはやはりリスクがありすぎる。
私のこの馬に対する評価はやや消極的だ。
【シーディドアラバイの 2019】2020年募集馬注目クロス②サンデー編<第5回>終わり
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