(1)はじめに
スクリーンヒーロー産駒でサンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬について考えている。
今回で3回目だ。
今年、社台・サンデーでスクリーンヒーロー産駒の募集がないのに、なぜスクリーンヒーロー産駒にこだわってインブリードの問題を追っかけているのか?
それは、 スクリーンヒーロー産駒 にサンデーサイレンスの3×3が多いこと。
十分なサンプル数があるので、統計的に有意、つまり偶然では説明できない、意味のある議論ができるからだ。
こうして得られた事実から、キズナ産駒、キタサンブラック産駒、オルフェーヴル産駒、ミッキーアイル産駒、サートゥルナーリア産駒、エピファネイア産駒、リオンディーズ産駒、ドゥラメンテ産駒、モーリス産駒など、今年の1口馬主募集馬でサンデーサイレンスのクロスを持つ馬たちを分析する際の参考資料になる。
そう考えたからだ。
でも、スクリーンヒーロー産駒 からわかったことをそのまま他の産駒に横滑りして使うことは慎んでいる。
さらにひと手間加えた分析を施すことで、今まで誰も指摘しなかった事実がみえてくる。
noteブログの有料記事のほうにその辺のことを詳しく書いていますので、よろしければご購読ください。
【サンデーのクロスで1口馬主を極める】👇
https://note.com/soumanosuikoden/n/n5ba64130d2b8
(2)スクリーンヒーローの種付け料推移をみる
まず残された疑問の一番目から考える。
答えを知るカギはスクリーンヒーローの種付け料にある。

スクリーンヒーローは2011年から種付けが始まり、種付け料については最初は50万円からスタートした。
産駒は3歳クラシックでの優勝はないものの、古馬になってからジワジワと戦績を上げるタイプが多く、2015年にブレイクを迎えた。
ゴールドアクターが有馬記念を、モーリスが安田記念を優勝したことで、翌2016年の種付け料は前年の150万円から300万円と一気に倍に跳ね上がった。
さらに2017年には700万円へとうなぎ登りに価格は高騰し、この年の種付け料がマックスとなった。
スクリーンヒーロー産駒にサンデーサイレンスのクロスが増えてきたのも、こうした種付け料の上昇という背景がある。
(3)答えは種牡馬と繁殖牝馬のマッチング

社台系の1口馬主クラブ馬の募集は2016年から始まる。
2015年生まれの ヒーロークライシス(牡)が社台サラブレッドクラブから募集され、この馬が サンデーサイレンスの 3×3を持っていた。
2017年以降も社台でスクリーンヒーロー産駒の募集にかけられるが、 サンデーサイレンス のクロスを持つ馬はいない。
それが2019年から2021年まで毎年のようにサンデーのクロス(3×3及び3×4)を持つ馬が社台サラブレッドクラブ募集馬のリストに含まれるようになった。
2019年から2021 年の募集馬は種付けが2018年~2020年に行われたことになる。
この3か年のスクリーンヒーローの種付け料は600万円で、高止まりしていた時期に重なる。
サンデーサイレンスのクロスを持つ馬を生産するには当然、サンデーサイレンスの血を持つ馬から繁殖牝馬を選ぶことになる。
繁殖牝馬にもランクがあって、種付け料がそれなりに高いスクリーンヒーローにあてがわれる繁殖牝馬のランクがこの時期に上がった。
スクリーンヒーローがサンデーの血を持つ牝馬と多く交配されることでその結果、サンデーサイレンスの3×3や3×4の馬が増えた、ということになる。
それでは、ほかにもサンデーのクロスを作ることができる種牡馬が多くいるにもかかわらず、なぜ スクリーンヒーロー 産駒にだけとりわけ多くサンデーサイレンスの3×3を持つ馬がいるのか?
その理由は、種牡馬と繁殖牝馬のランクのマッチング結果によるもの、というふうに推測する。
どういうことか。
2018年~2020年 のスクリーンヒーローの種付け料は600万円と書いたが、この価格は種牡馬のランクの中で中価格帯にあたる。

ディープインパクト、キングカメハメハの双璧にハーツクライ、ロードカナロアを加えた4強、種付け料が800万円を超えるグループが種牡馬のランクのトップで、400万円~600万円の価格帯が種牡馬の中位にあたる(2018年時点)。
ディープ、キンカメ、ハーツクライ、カナロア の4強の上位ランクには、海外から高額で買ってきた上位の繁殖牝馬があてられる。
これは競走成績を上げる理由も当然あるが、第一にブランドを持たせてセールや1口馬主クラブで馬を高く売るための戦略だ。
4強の次にくるグループの種牡馬たちには中位の繁殖牝馬、つまりサンデーサイレンスの血を持ちなおかつ競走成績のよい牝馬があてられる。
中位でもダイワメジャーはサンデーの直子になり、血が濃くなりすぎるのでサンデー系の牝馬はつけられない。
ドゥラメンテとモーリスはディープ、キンカメの次世代を任された新人、期待のホープだから、ブランド力をつくるために、中位の価格帯でありながらサンデー系の牝馬よりも海外輸入の重賞優勝歴を持つ牝馬を多くつけられた。
そうなると、消去法でスクリーンヒーローやオルフェーヴルがサンデー系の牝馬担当となるケースが増える。
調べると、オルフェーヴル産駒にもサンデーのクロスを持つ馬が多く存在するが、3×3は少なく、3×4が多い。
オルフェーヴルの気性を考えると、3×3では強すぎて気性難で仕上がらない、レースに行っても能力を発揮できないと考えられた結果、3×3の配合は避けられた。
3×3はリスクが高い反面、飛び抜けた能力を持つ馬が生まれる可能性がある。
つまりギャンブル性が高い。
このような実験を試みる対象として、消去法によって自ずからスクリーンヒーローが選ばれた。
真相はこのようなことになるだろう。
補足。
2016年にサンデーサイレンスの3×3のクロスを持つスクリーンヒーロー産駒、トラストが札幌2歳ステークスに勝ったことも、生産者を後押しする背景になったことは言うまでもない。
それでは、最後に残された疑問。
マイナー種牡馬ではなく、ディープインパクトやハーツクライといった超良血の父を持つ繁殖牝馬を スクリーンヒーロー と掛け合わせたらどうなるか?
これはまた次回に解説することにする。