(1)はじめに
前回は海外からの種牡馬の導入において、日高のラムタラの例だけでなく、規模は異なるが社台SSも同じような失敗を重ねているという指摘をした。
そしてこの失敗からどう学ぶかという問いかけに対して、次の作業が必要になる。
①「種牡馬失敗」の定義をどう捉えるか。
これを踏まえた上で種牡馬輸入の失敗と成功の原因を探る。
これがわかれば、今回のブリックスアンドモルタル導入の可否に答える手がかりをつかむことができるのではないか。
では、今回の記事では 「種牡馬失敗」の定義 から始めたい。
(2)社台SSが海外から輸入した種牡馬を評価する
まず、評価の基準について説明させていただきます。
×……失敗
△……微妙
〇……成功
◎……大成功
?……評価を控える
上の印の評価基準について、以下説明する。
×(失敗)は、
・産駒のJRAでの出走頭数が100頭以上で、産駒のG1競走優勝がゼロの種牡馬
【該当馬】
キャロルハウス、ゴールデンフェザント、カーネギー、ペンタイア、エリシオ、
ブロッコ、バチアー、チチカステナンゴ、ワークフォース、タートルボウル、
ノヴェリスト
△(微妙)は、
①産駒のJRA出走頭数が100頭以上で、産駒の重賞優勝頭数が3頭以上。
ただし、G1優勝なし。
②産駒のJRA出走頭数が100頭以上で、産駒の重賞優勝頭数が3頭以下。
かつ産駒のG1優勝が1頭。
③産駒のJRA出走頭数が100頭以下で、産駒の重賞優勝頭数が3頭。
ただし、G1優勝なし。
【該当馬】
ヘクタープロテクター、ドクターデヴィアス、ファルブラヴ、ドレフォン
〇(成功)は、
・産駒のJRA出走頭数が100頭以上で、産駒の重賞優勝頭数が4頭以上。
ただし、そのうち1頭以上はG1優勝している。
【該当馬】
ジェイドロバリー、ホワイトマズル、ティンバーカントリー、エンドスウィープ、
フレンチデピュティ、ウォーエンブレム、スウェプトオーヴァーボード、
ハービンジャー
◎(大成功)は産駒のJRA出走頭数が100頭以上で、産駒の重賞優勝頭数が10頭以上。
ただし、そのうち10頭以上はG1優勝している。
【該当馬】
サンデーサイレンス
?(評価を控える)は
①産駒のJRA出走頭数が100頭以下で、産駒の重賞優勝頭数が2~1頭。
②産駒のJRA出走頭数が100頭以下で、産駒の重賞優勝頭数がないが、海外で重賞競走を優勝している。
【該当馬】
フレンチグローリー、リファーズウィッシュ、グルームダンサー、ワージブ、
ハートレイク、ドリームウェル、スニッツェル、マインドユアビスケッツ
上の選択基準についての詳細は姉妹ブログ「相馬の梁山泊」のほうに記事を書きましたので、そちらをご参照いただければと思います。
https://ameblo.jp/aromacandle777/entry-12802680118.html
一つ断りを入れておきたいのは、失敗と一口に言っても、「誰を(どこを)基準とするか」によって変わってくる、ということだ。
上の表では、カーネギーを失敗例としている。
もちろん、この時期のカーネギー産駒を買った馬主さんたちにとっては、この馬は失敗した種牡馬ということで慨嘆されたことだろう。
生産者サイドとしても、「どうもこの度は申し訳ございません」と頭を下げたかどうかは知らないが、表向きは大きな顔をすることはできなかっただろう。
でもしかし、このカーネギーを母父として、後にモーリスが生まれている。
そして、モーリス産駒からジャックドールやジェラルディーナ、ピクシーナイトという優駿たちが生を受けた。
この馬たちがターフで美脚を披露したことで、 ジャックドール の馬主さんや ジェラルディーナ、ピクシーナイト のサンデーやシルクの1口馬主の会員のみなさんに喜喜と至福をもたらした。
カーネギーが日本にやってこなければ、サンデー・シルクの会員さんたちの喜びもなかった。
だから、長い目で見れば カーネギー の輸入は失敗でもなんでもない。
ホースマンたちはこのことがわかっている。
私たちは、目先のことを考えて馬作りをしてるんじゃない。
馬や人間の孫子(まごこ)の世代を見据えて仕事をしているんだ。
だから、輸入種牡馬の産駒がすぐに走らないからと言って、失敗だなんだと言って素人(この私)がほざくんじゃない。
矜持を持った人なら、きっと内心でこのように思っているはずだ。
タイトルに「社台の黒歴史を振り返る】なんて書いちゃって、関係者のみなさま、ホントにすみません。
(3)社台SSの海外輸入種牡馬の成功率は?
というわけで、反省しつつも、話をわかりやすく進めるために、ここではあえて「失敗」という言葉を使わせていただいた。
さらにわかりやすくしたい。
上の表は厳密に分けようとして5つ(◎〇△×?)も印を増やしてしまい、かえってわかりにくくなってしまった。
そこで単純に2つのグループに分けてみる。
①成功:◎〇
②失敗:△×?
そうなると、社台SSの海外から輸入した種牡馬の評価は以下の2群に分類される。
① 成功:◎〇 ⇒9頭
【該当馬】
サンデーサイレンス、ジェイドロバリー、ホワイトマズル、ティンバーカントリー、エンドスウィープ、
フレンチデピュティ、ウォーエンブレム、スウェプトオーヴァーボード、ハービンジャー
②失敗:×△?⇒23頭
【該当馬】
キャロルハウス、ゴールデンフェザント、カーネギー、ペンタイア、エリシオ、
ブロッコ、バチアー、チチカステナンゴ、ワークフォース、タートルボウル、
ノヴェリスト、ヘクタープロテクター、ドクターデヴィアス、ファルブラヴ、
ドレフォン、フレンチグローリー、リファーズウィッシュ、グルームダンサー、
ワージブ、ハートレイク、ドリームウェル、スニッツェル、マインドユアビスケッツ
ドレフォンや マインドユアビスケッツ も失敗馬に入れてしまっており、ずいぶん無茶苦茶な分類だということは承知している。
要は、数字の上で顕著な成果を出している種牡馬以外はすべて失敗とみなそうという基準になるので、ご了解いただければと思う。
(ホースマンさんたちばかりでなく、ジオグリフやマインドユアビスケッツ産駒に出資されている方々からも轟轟と非難が寄せられそうだ)
そうすると、上の成功馬、失敗馬の比率をパーセンテージで表すと、次のようになる。
①成功馬:28%
②失敗馬:72%
つまり、海外から輸入する種牡馬は10頭に2~3頭しか成功しない、ということになる。
種牡馬でクリー ン ナップが打つのは、野球でいう3割バッターにはわずかに届かない。
当たり馬の種牡馬を導入するというのは、これほど厳しく困難な道だということだ。
今回はここまで。
次回は社台の海外種牡馬導入の失敗原因に切り込みます。
「【社台の黒歴史を振り返る】 ブリックスアンドモルタルの疑問④ー2」終わり
次回「【失敗も成功もサンデーサイレンスとともに】 ブリックスアンドモルタルの疑問 ④ー3」に続く。
【攻略法】ブリックスアンドモルタル産駒
https://note.com/soumanosuikoden/n/n6d70fac97395
【サンデーのクロスで1口馬主を極める】