私たち消費者が価格の高い、安いを何によって決めているだろうか。
それは当然、他の商品との比較によって相対的に高低を感じる。
同じ商品を他のスーパーの小売値と比較して、より安い商品を選択するという感覚は、私たちが日常的に経験していることである。
まったく同じ商品がない場合、それと比較的似ている商品の値札と比べて、よし悪しを判断する。
こうした消費者の心理につけこんで、売り手はアンカリングという戦略を駆使する。
たとえば、高級洋品店の場合、店の入口に高い値段のAという商品を置いておき、店の中には、店頭の高額商品よりも安いが、それでも単体として見た場合、高額の商品B(Aと類似している)を陳列する。
そうすると、消費者の心理としては、バカ高いAと比較すると、それでも高いBは割安だと感じて、Bを購入する。
この場合、AはBに対してアンカリングの効果を持っている。
競走馬の市場の場合も同様だ。
2019年のセレクトセールでドレフォン産駒(当歳)の価格が高騰した。
これは、セールの初めにドレフォン産駒の先頭を切ってセリにかけられたアドマイヤセプターの2019(牡馬)が2億5000万円もの価格をつけて落札された。
この馬は祖母がアドマイヤグルーヴ、曾祖母がエアグルーヴという良血馬で、高額落札必至の上場馬であった。
この2億5000万円がアンカリングとなって、その後に取引されたドレフォン産駒の牡馬たちは、下記のように、いずれも比較的高値(2020年セレクトセール比)で落札されることとなった。
ビキニブロンドの2019:8,400万円
シナジーウィスパーの2019:6,000万円 |
これは、販売者のノーザンファームグループのマーケティング戦略にバイヤーたちはまんまと乗せられたと見ることができる。
https://note.com/soumanosuikoden/n/n05acd40ef91d
社台系の1口馬主の値付けも同様だ。
あえて「良血馬」に高額の値段(1口250万円以上)をつけることで、他の馬(100万円以上)を安く見せるアンカリングを狙っている。
高額馬は良血で走る(レースパフォーマンスがよい)から値段が高く設定されているのではなく、あくまでも他の高い馬を躊躇なく買わせるための値付けといっていい。
こんな戦略にまんまと誘導されないように、1口馬主で勝つには安馬(100万円以下)を徹底的に狙っていくべきだ。
クロノジェネシス(1口:35万円/40口)の出資者たちは、こういう意味で1口馬主の勝ち組だ。
んなこと言っても、社台グループの1口馬は、どんな価格帯の馬でも最後は完売してしまうんだけれどもね。