(1)はじめに
「初仔の牝馬は走るのか」というテーマで3回にわたってサンデーサラブレッドクラブ募集馬の2013年、2014年産をもとにデータを収集・分析してきた。
初仔の牝馬の勝つ上がり率については、悪い数字が出て、初仔の牝馬はデス・ゾーンという推測を示唆することができた。
それでも、2014年産にG1優勝馬のアエロリットが出て、「初仔の牝馬は走るらない」と結論づけるのをためらわせる事態となった。
私は諦めが悪い。
なので、このテーマについてはもっと掘り下げてみようと思い、今度はサンデーサラブレッドクラブ募集馬のすべての重賞優勝馬の生まれ順についてデータをとってみた。
その結果は次章以下に記すが、驚くべき衝撃の事実が明るみに出たことだけを先に告げておこう。
(2)「2番仔は走る」はオカルト
上に掲げた表は、サンデーサラブレッドクラブ募集馬(日本大ナーズクラブも含む)のうちのすべての重賞優勝馬について、生まれ順を牡メスに分けて調べたものである。
1991年2月17日の小倉大賞典(G3)に優勝したレッツゴーターキンから2020年6月7日の安田記念(G1)に優勝したグランアレグリアまでをデータ化した。
基本的にはサンデーサラブレッドクラブの公式ホームページの重賞勝ち馬一覧に掲載されている馬について数えた(直近のグランアレグリアとパフォーマプロミスは掲載されていなかったので、追加した)。
公式ホームページに記載漏れの重賞優勝記録もあり、追加して数えた。
結果は、当初の予想を裏切るものとなった。
初仔の牝馬で重賞を勝ったのはアエロリットがレアケースであって、その数は極めて少ないであろう。
そんな憶測で調べてみたが、結果は予測を裏切るものであった。
初仔の牝馬(メス)の重賞勝ち数の比率(17.6%)は、初仔の牡馬の重賞勝ち数の比率(16.3%)や2番仔の牝馬(メス)の重賞勝ち数の比率(16.2%)を上回っている。
また、初仔の牝馬(メス)の重賞勝ち馬率(20.0%)も初仔の牡馬の重賞勝ち馬率(17.9%)や番仔の牝馬(メス)の重賞勝ち馬率(11.4%)を上回っている。
この数字をもってただちに「初仔の牝馬は走る」「初仔の牝馬は重賞を勝つ」という結論を導くことには慎みたい。
重賞勝ち数の比率の違いは、統計上の誤差の範囲に収まる可能性を排除できない。
したがって、この統計資料から読み取れることは、以下の事実だ。
「少なくとも、初仔の牝馬は重賞優勝において、ハンデはない」
「初仔の牝馬は初仔の牡馬や2番仔以降の牝馬に比べて重賞優勝について明確な差異は見られない」
私を驚かせたのは、これだけではない。
「2番仔は走る」という俗説をこれまで私はかたくなに信じ、1口馬主の出資の際の重要な判断基準のひとつにしてきた。
ところが、このデータでその確信はあっけなく崩れ去ってしまった。
2番仔の全馬の重賞勝ち数の比率(10.1%)は初仔や3番仔以降の数字に比べて特に良好ではない。また、重賞勝ち馬率(12.1%)も際立って高いわけではない。
社台やほかの1口クラブの数字や個人馬主の数字などビッグデータを調べているわけではないから、この傾向が日本の競走馬全体についてあてはまるものかどうかは確言できない。
しかし、少なくとも、サンデーサラブレッドクラブ募集馬については、2番仔がとりわけ「走る」ということは客観的なデータで裏付けることはできなかった。
出資馬のジェンティルドンナは2番仔で、この馬のイメージが強烈だから、「2番仔は走る」という固定観念がすりこまれてしまった。
でも、あの馬は例外で、サンデーサラブレッドクラブ募集馬で重賞馬をゲットしたいのであれば、特に生まれ順を気にする必要はない。
ただし、前回までの「初仔シリーズ」で示唆したように、初仔の牝馬で小さい馬は未勝利に終わる馬が多いので、測尺には注意するべきである。
競走馬のレースパフォーマンスに大きな影響を与えるのは、その馬の生まれ順はあまり関係なさそうだ。
しかし、それでも、この生まれ順の視点は「走る馬」をゲットするのに大きなヒントを私たちに与える。
アメリカの研究成果から、次回は有料記事でこの問題の核心に迫ることにする。
※サンデーサラブレッドクラブ募集馬の初仔で重賞を勝った馬のリストは『相馬の梁山泊』で掲載しています。
【資料/初仔の牝馬で重賞を勝った馬】サンデーサラブレッドクラブ募集馬
https://ameblo.jp/aromacandle777/entry-12603159836.html
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