(1)2年連続ジャパンカップ優勝
府中の最後の直線。
ジェンティルドンナが馬群を割って抜け出す。
完勝と思った矢先、外から黄色い帽子が飛んでくる。
父ディープインパクトと同じ勝負服だ。
金子さんのデニムアンドルビーが外を強襲してジェンティルドンナと並んでゴール。
私たちが見ていたゴール手前からは、デニムがわずかに差し切ったかに見えた。
がっくりと膝が崩れ落ちる感覚。
去年のジャパンカップと同じ写真判定になった。
去年は相当長い時間待たされたが、今年は違った。
すぐに7番のランプが一番上に点(とも)る。
ジェンティルドンナが2年連続でジャパンカップを制した。
2013年11月24日(日)。
東京競馬場で、私は1口馬主人生最高、いや、「1口馬主」は取ってもいい。
人生最高の秋(とき)を迎えていた。
ジェットコースターの山を猛スピードで下り終えて車輪の音をきしませて急停車する。
緊張がマックスからいきなりの脱力感、そのあとの達成感とでも言ったらいいのだろうか。
そんな感覚に似た歓びの感情がじわじわと湧いてくるのを感じた。
(2)久しぶりに会った競馬仲間には言えなかった
その場には、卒業後、数十年ぶりに集まった大学時代の競馬研究会の仲間がいた。
久しぶりに会った競馬仲間たちと、快挙の瞬間に立ち会えたのが嬉しかった。
けれど、私がジェンティルドンナに出資していることを告げていなかった。
正確には、告げられなかった。
このわずか数分でジャパンカップの賞金2億5千万円強(付加賞金を含む、2013年当時)のうち、1口の賞金400万円近くが懐(ふところ)に入ることになる。
仲間のうちの一人は飲食店を経営している。
週休1日でめいっぱいに働いても、たいして儲からないと嘆いていた。
父親と一緒に額に汗して毎日働いて、私に入ることになるのと同額に近い収入をようやく手にする。
そんな彼を前にして、涼しい顔をして1口馬主でG1を勝って、あぶく銭の大金が手に入ったことを言うのは、なんだか申し訳ない気がした。
素直にジェンティルドンナに出資していることを告げたら、仲間たちは祝福してくれたにちがいない。
それなのに隠すのも、なんだか変だ。
言うのも、隠すのも気が引ける。
ジャパンカップのあと、仲間たちと飲みに行ったのだけれど、心中、ずっと複雑な気持ちが去来した。
ちなみに、ジャパンカップでわたしが買った馬券は7番(ジェンティルドンナ)の複勝を5000円。
馬券の買い方もしみったれている。
おそらく社台・サンデーの会員の多くは、400万円の1口賞金なんて、はした金のはずだ。
それなのに、この程度の金額であれこれ思い悩む私は、性根がしみったれている。
(3)金が空から降ってくる
しみったれついでに書かせてもらうと、ジェンティルドンナが現役で走っていた
期間(2011~2014年)は、数か月ごとに百~数百万円の賞金が振り込まれてきた。
お金が空から降ってくる。
当時はそんな感覚を持った。
非正規の私は、それまでは、1日1万円前後の日銭(ひぜに)をコツコツというか、セコセコ足で稼ぐような仕事で生計を立てていた。
こうした地を這うような生活が一変した。
ジェンティルドンナで、都合2500万円近い賞金を手にすることになった。
そのお金の使い道については、また後日書くことにする。
私の人生を一変させた、あのジャパンカップが今年もまたやってくる。
『1口馬主で成功する方法~ジェンティルドンナの出資者が語る回想記』第1回「ジャパンカップ勝つと賞金がいくら入る?」終わり。
『1口馬主で成功する方法~ジェンティルドンナの出資者が語る回想記』第2回に続く
『1口馬主で成功する方法~ジェンティルドンナの出資者が語る回想記』はこれから不定期に連載します。
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