(1)ヴォルガの基本データ
マザーロシアの2018は2019年、1口50万円でサンデーサラブレッドクラブから募集された牝馬だ(栗東・松下武士厩舎に預託予定)。
このたびヴォルガと名前が決定した。
ロシアの母なる河だからヴォルガとは、なかなか気の利いた命名だ。
このようなシンプルな名前は覚えやすいしかっこいい。
今年のクラブ馬で一番気に入った馬名だ。
母のマザーロシア (2006年生まれ、父Mayakovsky) はG3ロイヤルノースS(芝1200m)を2着した。
マザーロシアの父マヤコフスキー(Mayakovsky)は9戦3勝G3ゴーサムステークス(ダート8F)に優勝した馬で、デビュー戦をレコードで勝ったアメリカの快速馬。
スピード値が勝る母系をドゥラメンテに配して、どんな化学変化が見られるか注目だ。
兄はG2のUAEのダービー 3着馬ゴールデンバローズ (牡馬、2012年生まれ、父Tapit、 5勝)。
きょうだいの成績や母系を考えると芝でもダートでもいけそうな気がする。
快速の血を感じさせる配合だ。
(2)ヴォルガの馬体評価
ヴォルガの1歳募集時の測尺を下に掲げる。
体高146.0、胸囲163.0、管囲18.6、体重370
●1歳募集時の理想的な測尺
胸囲172cm以上、管囲20cm以上、体重420~455キロ。
ヴォルガは基準値から3項目ともに大きく下回る。
5月6日の遅生まれだからやむをえまい。
同じサンデーサラブレッドクラブのドゥラメンテ産駒アスコルターレも遅生まれ(4月4日)で、馬体が小さかった。
ノーザンファームは新種牡馬ドゥラメンテ産駒で1月2月の早生まれ、体格がよく見栄えのする馬をセレクトセール用にとっておいて、遅生まれで見栄えのしない馬は、どうせほっといても売れるだろうからと、クラブへ回した疑惑が発生!
ちなみに最新(2020年3月6日)の馬体重は466キロにまで成長し、馬体重のハンデはない。
ヴォルガの馬体を改めて見てみると、胸前の盛り上がりに対して、首が細くて短いのが気になる。
競走馬は首をテコのように振って走るから、程度にもよるが首は長いほうがいい。
父のドゥラメンテ(一番下の写真)は理想的な首をしている。
(3)クラブコメントからヴォルガを評価する
背中に皮膚病が出てしまったため騎乗運動を控えています。若駒は、環境が変わったり、ストレスがかかって皮膚病になることが珍しくないため、特に心配はありません。動きには多少の硬さはありますが、走りに軽さがあってフットワークの良さがあります。少し怖がりな性格には気を付けて鍛えていきます。
2019年10月4日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
キャンター中はモタれる感じがあるため、改善できるように意識して調教を行っています。馬体はまだ幼いためこれから変わってほしいところですし、周りを気にする面もあります。心身の成長を促していきます。
2019年11月1日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
ロンギ場を中心に調整していたところ、11月中旬に右後肢の歩様が乱れたため、しばらく運動を控えて様子をみていました。その間に馬体に幅が出てふっくらとした印象があるので、結果的に良いリフレッシュになったと思います。歩様の回復を待って、いまはトレッドミルでキャンター運動を行っています。近々騎乗運動も再開できる見込みです。
2019年12月6日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
右後肢の歩様も気にならなくなったことから騎乗調教を再開しました。休んでいたぶん馬体に余裕がありますが、体高が伸びて全体的に成長したと感じます。現在は周回コース2400mを軽めキャンターで乗られています。少しずつ幼さが抜けてきて、落ち着いて走れるようになりましたし、ハミ受けも良化しています。脚元の状態を確認しながら徐々にペースアップも図ります。
2020年1月6日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
慎重にペースアップしていることもあり、ここまでは歩様に問題ありません。口向きが良くないところはこれから改善を図りますが、コースではだいぶ落ち着いて走れるようになりました。最近では近くで他馬が暴れても、つられることは少なくなっています。心身ともに成長しているので、この調子で乗り込みたいと考えています。
2020年2月7日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
調教を続けても馬体が減らなくなってきたので、ペースアップを図りました。フラつくことはありますが、筋力アップにより馬場に脚を取られることは少なくなりました。気持ちが入りやすい性格を考慮して、適度にリフレッシュを挟みながら鍛えます。
2020年3月6日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
こうしてコメントを追いかけて見ていくと、この馬はいろいろとアクシデントがあって育成が難航していることがわかる。
初めに皮膚病(10月)。続いて右後肢の歩様の乱れ(12月)。
でもこうした小さなトラブルは若駒にはよくあることで、大事には至らなくて何よりだ。
最新のコメントでは、ペースアップにも筋力アップで対応できているようで、いったん逸れた軌道の修正に成功しつつある。
これから15-15でどういった動きを見せるかでこの馬の真価が問われる。
というわけで、評価は保留。
(4)ヴォルガの調教動画を見ての評価
●2019年12月23日の調教動画
坂路にはまだ入れていない。
軽い常歩だけ。
左胸の白い線が気になる。
治りかけの擦り傷か?
●2020年2月28日の調教動画(ラップは16.2-15.4-16.2 3F47.8)
5頭合わせの左から2番目。
時おり首を傾ける仕草は、坂路の速い調教がきついからか。
ふらふらして時々よれたりしている。
まだ体力がつききっていない印象。
もう少し16-16に慣れる必要がある。
調教動画の評価はいまひとつ。
(5)ヴォルガの評価まとめ
育成はやや遅れているグループに入ると思う。
2歳新馬開幕にクラブ馬が一斉にデビューできるわけでは当然ない。
最大のライバルは同じノーザンファーム生産・育成馬なので、問題は勝ち星を食い合わず、使い分けをする必要があり、そうするとデビュー時期も自ずからばらける。
それでも、シルクやキャロットからの有力馬のデビュー戦とぶつかる場合があるわけで、強い馬と同じレースを選択すると、せっかく勝てるレースをとりこぼす不運に見舞れる。
何をいいたいかというと、ローカルデビューは強豪馬と重なる機会が少なく、勝ち上がるチャンスが増える。
ヴォルガは夏の北海道や新潟開催に合わせて調整してみては、とふと思った。
早い時期に1つ勝っておけば、無理にローテーションを組まなくても、あとは馬の成長と状態を優先させてレース選択をすればよい。
松下武士調教師とクラブにはそんなことを配慮してもらえれば、とひそかに思う。
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