【バブル景気は日米政府による陰謀?】

いま、『資本主義と民主主義の終焉~平成の政治と経済を読み解く』水野和夫、山口二郎(祥伝社新書)を読んでいる。

ちょうど第1章(新時代への期待)を読み終えた。

この中で、水野和夫が衝撃的な珍説を語っている。

なんと、バブル景気は日米政府合作で起こったという。

ちなみに、バブル景気とは1985年のプラザ合意を機に円高不況となり、日銀が公定歩合を戦後最低の2.5%に引き下げたのを端緒として始まった。株や不動産などの投機的な取引が活発化し、日経平均株価は1989年12月29日、史上最高値の3万8915円を記録した。

バブル景気の直接の契機としてプラザ合意が挙げられるが、これはアメリカの「双子の赤字」を改善するためのものだ。

当時は米ソ冷戦下で、アメリカのレーガン政権はソ連と激しい軍拡競争を繰り広げていた。1983年に戦略ミサイル防衛構想(スターウォーズ計画)をぶちあげ、宇宙空間の軍事衛星と地上部隊が連携してソ連の核ミサイルを迎撃する体制を整備するために、巨額の資金をつぎ込み、財政赤字となっていた。これが経常赤字(ざっくり言って貿易赤字)と合わせて「双子の赤字」と呼ばれていた。

プラザ合意では、具体的には、西側諸国の中央銀行がアメリカ経済をアシストするためにドル安誘導に向けて為替市場にドル売り、円(マルク)買いの協調介入を行うというもの。これによりドル安円高に為替を操作して、アメリカを救いだそうというねらいがある。

この結果、急激な円高となり、日本からの輸出は減って円高不況と呼ばれる窮状に日本経済は陥った。

この不況を打開するために、日銀が公定歩合の大幅引き下げを行い、バブル経済が始まった。

この経緯の中で、バブル景気が日米合作によって仕掛けられたという。

水野の話に耳を傾けよう。(P28~29)

日本はアメリカ国債を大量に買い、アメリカの軍拡を資金面から支えていた。急激なドル高・円安は「銀行に兆単位の為替損益を」生じさせた。そうなると、日本の生保や銀行はアメリカ国債を買い控えるかもしれない。するとアメリカの金利は上がり、アメリカは不況に陥る。アメリカ国民は軍拡をやめるようにレーガン政権に圧力をかけ、スターウォーズ計画は頓挫する。アメリカは「悪の帝国」ソ連に軍拡競争で負けることになる。これではいけない。そこで日米両国は「日本市場を株高に誘導して、為替差益を上回る含み益を生保、銀行に持たせるために、バブルを合作したのではないか」、という。

これは水野の独創ではなく、『通貨燃ゆ』(谷口智彦)からインスパイされたものだとのこと。

水野の空想には続きがある。

バブル景気は米ソ冷戦という国際情勢を背景として日米両政府によって作り出されたものだが、バブルの崩壊は冷戦終結後の日本叩きとして一方的にあちらから仕掛けられたという。

直接的には、バブルの崩壊は1990年3月末から開始された総量規制がきっかけと言われている。つまり、不動産向け融資を一定の割合以下とする金融機関に対する大蔵省の行政指導がそれだが、水野はこれも陰謀論で説明する。

1989年11月のベルリンの壁崩壊から12月のブッシュ‐ゴルバチョフのマルタ会談による冷戦終結宣言までの流れの中で、もう日本には含み益はいらないという判断で、外国人投資家が日本株の先物をバンバン売り浴びせた。

水野の議論はなんか思いっきり後付けで、一番得をしたのは誰か、得をした人間(グループ)が事件を仕掛けたという陰謀論の構図そのままだ。

学術論文では通用しないけれど、この手の一般向けの読み物(祥伝社新書)とすれば、堅苦しい話ばかりでは飽きるから、いいのだろう。

水野もそこらへんの呼吸はきちんと心得ている。

こんな感じで、『資本主義と民主主義の終焉~平成の政治と経済を読み解く』を読んで私が面白いと思ったトピックスを一章ずつ紹介していきます。

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