(1)JRAは無観客開催を発表
2月27日、JRA は新型コロナウイルス流行を受けて、感染拡大防止のため、今週(2月29日、3月1日)の阪神、中山、中京の全場で無観客開催を行うと発表した。
ソースはデイリースポーツより
https://www.daily.co.jp/horse/2020/02/27/0013149714.shtml
競馬は競馬場でファンの歓声があってこそ盛り上がるもの。
それが、お客さんのいない中で競馬をやる、というのは騎手をはじめ関係者としてはどういう心境だろう。
ガランとして広い競馬場でただアナウンサーの実況だけが響く。
ゴール前の歓喜の声も悲鳴もない。
どよめきと宙に舞うハズレ馬券。
マナーとしてはアレだけれど、あの光景こそが競馬だ。
レースが終わったあと、ファンの顔を2つに分ける。
この世の幸福のすべてを独り占めしたと言わんばかりの表情と、ギラつかせた眼光の残光の持っていき場のない、やさぐれた表情。
ここには、職業や身分・地位などない。
学歴や資格など一切関係はない。
ただ馬券を取った者とそうでない者とを真っ二つに切断する。
ひどく明快で、潔い。
ある種の平等、あるいは絶対的な不平等の世界がここにはある。
そんな悲喜こもごもがなんにもない。
人間ドラマが見られない無観客はどうなのよ。
正直、そう思う。
でも、決まった以上は仕方ない。
(2)福永祐一のコメント
それでは、この史上初のJRA無観客開催の決定に対して騎手はどんな反応をしたのだろうか。
まずは日本騎手クラブ副会長の福永祐一騎手のコメントから紹介したい。
「仕方ないですよね。(中略)自分たちのやるべきことは変わらないので、いいレースを提供できるように、全力を尽くして頑張りたいと思います。」
ソースはデイリースポーツより
https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=167716
これって? なんか優等生っぽくね?
副会長の立場だから「仕方ないですよね。」
ホンネとしては、競馬場ではファンからいつもヤジられてばかりなので、口さがないファンがいないだけ、せいせいしている、とでも思っているのではないだろうか。
「なんで俺だけヤジられるのか?」
って思ってんじゃねーよ。
「なんで、あんただけ人気背負って、まともな騎乗ができないんだ?」
って返すよ。
ファンのプレッシャーから解放されて、今週の福永は買いか?
いや、ヤジられてかえって(ヤジられないように)がんばるタイプだから、むしろ福永馬券は外し、か。
(3)四位洋文のコメント
一方、阪神競馬場で騎乗する2月29日が現役最後の騎乗となる四位洋文騎手は
「ファンのことを考えれば仕方がないし、当然の判断でしょう。最後の最後に無観客という初めての経験ができると思って」
スポーツ報知より
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200227-02270105-sph-ent
こちらは、「うるせえよ!」と切れる相手もなく、誰も引退レースをねぎらってくれるのファンの声もないなかの静かな引退式となる。
皮肉だ。
ええかっこしの四位騎手としては、本当は大勢のファンに囲まれて最後のレースを迎えたい、というのがホンネではないだろうか。
ところで、四位は自分のスタイルが確立していて、強い信念を持って騎乗している。
社台系の馬とはあまり縁がなく……
と書いたところで、改めて調べたら、四位騎手の初めてのG1勝ちが1996年
イシノサンデーの皐月賞 だった。
その年、ダンスパートナーでエリザベス女王杯 も勝っている。
四位騎手としては、どうしてもウオッカとディープスカイのイメージが強く、非社台の昆貢調教師との関係で語られることが多い。
だから、社台・サンデーの1口馬主会員としては、どうしても遠い騎手というイメージを持つ。
けれど、一本筋が通った生き方は、ある種の畏敬を感じる。
個性的な騎手がまたひとりターフを去った、という寂寥感が去来する。
せめて大勢の観客の前で引退レースをやらせてあげたかった、というのが正直な思いだ、
(4)競馬場の飲食店に補償を
ここまでは、騎手目線で今回の無観客開催についての感想を書いた。
JRAは馬券の売り上げは下がるが、公務員みたいなもんだし、職員や関係者の給料が減るわけでもない。
馬主や騎手などの関係者も賞金は従来と変わらずに出るのだから、無観客でも影響がない。
ファンとしても新型コロナウイルスの感染リスクが減るから、今回の決定はいいんじゃないか。
概ね、こうした感想が大半を占めるかと思うが、ただひとつ気がかりなのは、場内の飲食店だ。
ただでさえ、競馬開催が一年で限られているなか、飲食店の経営者は生活がかかっている。
無観客での影響は計り知れない。
そこでJRAにお願いしたいのは、競馬場の場内に店舗を出す飲食店に何らかの補償を検討してもらいたいことだ。
個人的にお世話になった方々が飲食店にはおられる。
その人たちの顔を思い浮かべると、今回の決定が「仕方ない」だけでは済まないと思うのは私だけだろうか。
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