(1)口上
There are no birds of this year in last year’s nests.(去年の巣に今年の鳥はいない)
A fox is not taken twice in the same snare.(狐は二度と同じ罠にはかからない)
英語でも同じような慣用句があるんだ。
上の文章を日本の慣用句に置き換えると何になるか。
わかりますか?
「柳の下に二匹泥鰌(ドジョウ)はいない」
前回、うまく行ったからといって、今回もまた同じことを繰り返してもうまくいくとは限らないという意味なのは、解説しなくても、読者のみなさんはわかると思う。
それにしても、英語圏では鳥や狐で、日本は泥鰌というのは文化の違いだね。
ヨーロッパは狩猟文化だから、鳥や狐は狩りの獲物。
それにしても、泥鰌っていうのは、ドジョウすくいの「安来節」を連想して、なんだか彼我の差を感じて悲しい。
前置きは長くなったが、ジオグリフの下の【アロマティコの21】もやはりドジョウか? っていうのが今回の話。
(2) 【アロマティコの21】 のきょうだいを比較する
アロマティコは子だしがよく、2016年に初仔を産んでから、毎年出産して、今年のブリックスアンドモルタルとの間で生まれた子どもを入れて、もう7頭目である。
このうち、これまで5頭がサンデーサラブレッドクラブで募集されている。
ちなみにエピファネイア間で生まれた「アロマティコの20」、つまりジオグリフの1つ下の子は残念ながら亡くなっている、とのこと。
得意の新測尺評価法でクラブ募集の5頭を比較してみる。
産駒は全体的にプラス評価(赤字で強調してある)が目立ち、体躯の大きい子どもを出していることがわかる。
アロマティコの繁殖牝馬としての優秀さがうかがえる。
産駒5頭の中でも、2番仔のファートゥアが体高・体重とも大幅プラスを計上し、ジオグリフをしのいでいる。
それなのに、未勝利で引退に終わったのには理由がある。
気性の問題だ。
レースでは力みが出て高いポテンシャルを持っていても生かしきれない。
2019年9月16日の中山2歳未勝利戦では、スタートで立ち上がってしまい、騎手を振り落として落馬、競走中止というアクシデントも起こしてしまう。
新測尺評価法でいくら優秀な評価値が出ていても、気性難ばかりは判定できない。
3番仔のアルビージャは体重が-0.4 でも、体高が+3.9と大きくプラス評価が出ている。
わずか3.9cmというなかれ。
この差は表面積全体に及び、その後の大きな成長を示すサインとなる。
事実、アルビージャは 2歳11月のデビューでは514㎏ の巨漢馬としてターフに姿を現し、募集時のマイナス分を大きなお釣りをつけて巻き返した。
その後4勝の活躍を示すのは、ジオグリフ大爆発の予兆となる。
そして、肝心の 【アロマティコの21】の測尺評価だが、体重は-10.9と大きく差がついている。
そして体重は+1.6でわずかにプラス。
体重のマイナス分を体高のプラスでカバーして、デビュー時には標準を少し上まわる体高・体重で競馬場に姿を現すと読んだ。
(3)ひょろりとした馬体の成長力は?
それでは、 【アロマティコの21】 の馬体写真と動画を見てみよう。
カタログ写真は測尺の数値から想像したひょろりと背が高いイメージそのままの容姿。
体高が高いのはいいが、もう少し肉付きがほしい。
1歳の成長期は体高の成長と体重の成長とにタイムラグが生じて、本馬のようにアンバランスな馬体となる馬もいる。
ただし、精神的な問題で飼い葉食いが悪いのが原因で、このようなひょろりとした馬体になっているならちょっと心配だ。
牧場見学ツアーに行かれるのなら、この馬を引いているスタッフに「飼い葉食いはどうですか?」と聞いてみるといい。
スタッフは嘘を言わないだろうが、口を濁すようなら、この馬の出資に慎重になったほうが身のためのような気がする。
動画を見たが、後肢の踏み込むが深く、力強い。
馬体はやや薄めだが、ガレている印象はない。
飼い葉食いが悪い、というのは杞憂かもしれない。
ジオグリフの1歳募集時の写真と並べて比較してみる。
皐月賞という刷り込みができてしまっているせいもあるが、上の写真の方が、トモの容積が大きく、ドッシリとしていて、全体的にしっかりしているように映る。
これは牡馬と牝馬の違いもあるだろう。
【アロマティコの21】 は総合的に見て悪くない。
ただ、相馬の梁山泊のほうで書いたように、もう少し馬体に緩さが欲しい。
もうワンパンチ、迫力不足というのが正直な感想になる。
(4) 柳の下に二匹めの泥鰌はいるか
柳の下にドジョウはおったか?
現時点では、まだ力不足。今後の成長待ちというところ。生まれ月が4月5月ならば面白いけれど、3月というのが微妙かな。
きょうだいでG1を勝っちゅうのは、そうおらんで。
ハービンジャー牝馬はやや晩成傾向にあって、モズカッチャンやディアドラ、ノームコアのように本格化するのは3歳秋以降。
【アロマティコの21】 は 測尺評価はあまり特筆できるほどのものじゃないけれど、密かに、この馬はもしかして、ドジョウなんじゃないかな、という予感めいたものはある。
3歳の夏をどう越すかにかかっている。
で、兄さん、この馬に行くんかい?
今年は人気が割れるような気がする。この馬も当然人気するだろうが、去年のメチャコルタみたいにエゲツない倍率にはならないだろう。僕の実績では、抽選頼みになるから、もっと確実な馬に出すかもしれない。
アロマティコでググったら、こんなん出てきた。ドジョウ鍋で一杯やりたくなってん。
次回は「相馬の梁山泊」にて掲載します。