社台・サンデーサラブレッドクラブで2019年に募集差されたモーリス産駒について、馬体や血統、調教動画とクラブコメントを材料に前回まで検討を加えてきた。
今回からは、モーリスと同じ新種牡馬ドゥラメンテ産駒について、同様の検討を行い、産駒の傾向をつかんだうえで今後の展望をみていくことにする。
(1)サンデーで募集されたドゥラメンテ産駒(2歳馬)
2019年にサンデーサラブレッドクラブで募集されたドゥラメンテ産駒(2歳馬)は合計6頭だ。
()内は競走馬名
・イプスウィッチの18(アゼルスタン):牡馬、1口100万円、美浦・堀宣行厩舎
・ウミラージの18(ウルランテ):牡馬、1口90万円、美浦・菊沢隆徳厩舎
・ダイヤモンドディーバの18(ディアマンテール):牡馬、1口100万円、美浦・国枝栄厩舎
・パシフィックギャルの18(リーフラグーン):牝馬、1口60万円、美浦・
田中博康厩舎
・アスコルティの18(アスコルターレ):牡馬、1口100万円、栗東・西村真幸厩舎
・マザーロシアの18(ヴォルガ):牝馬、1口50万円、栗東・松下武士厩舎
以上、牡馬が4頭、牝馬が2頭で、1口価格も50~100万円と比較的リーズナブルに設定されている。
(ディープインパクト産駒の価格高騰にすっかり慣れてしまっていて、上記の価格設定をリーズナブルと書いてしまう自分が怖い)
(2)アゼルスタンの馬体評価
アゼルスタンの1歳募集時(2019年6月)の測尺を以下に掲げた。
体高151.0、胸囲170.5、管囲20.5、体重408
●理想とする1歳募集時測尺
1歳募集時、胸囲172cm以上、管囲20cm以上、体重420~455キロ。
アゼルスタンの1歳募集時測尺は管囲のみクリアーしている。
胸囲、体重は少し足りないが、悪い数値ではない。
最新(2020年3月6日)の馬体重が476kgで、いい感じで成長している。
1歳募集時写真(上の写真)では、繋ぎがややたち気味に見えるが、2歳の最新写真(中の写真)でもそれは確認できる。
これは父ドゥラメンテ(下の写真)の特徴を受け継いだものといえるだろう。
アゼルスタンは募集時写真は緩さが目立ったが、調教を積んで少しずつ競走馬の馬体に近づいてきている。
肩廻りの力強い筋肉が特徴で、前後・上下のバランスがいい。
こういう馬は確実に走ってくる。
現時点での馬体は水準以上の得点をつけてもいい。
(3)育成過程でクラブコメントからのアゼルスタンを評価する
動きは柔らかく、乗り手の指示にも素直に従っています。非力な印象は残りますが、馬体に筋肉がついてきたことで、ここ最近は著しい改善を遂げています。気持ちの面は大人しく、扱いやすいタイプですが、ときおり過剰な反応をみせることがあります。
2019年10月4日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
周回コースではリラックスして走っていますが、坂路では少し力が入り過ぎてしまうことがあります。馬体をみると、体高は変わりないものの、トモにはボリュームが出て、迫力が出てきました。まだトモ高なので、さらなる成長も期待できそうです。
2019年11月1日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
週2日は軽めの運動、週1日は屋内周回コースでハッキングキャンターを1800m、週3日は屋内坂路でハロン16秒のキャンターを1本のメニューを消化しています。ハロン16秒のメニューでも前向きで、良い手応えで走れています。乗り味は柔らかく、騎乗者から乗りやすいという評価を受けています。馬体には緩さが残りますが、メリハリが出て、見栄えのする体つきになってきました。我の強さをみせていますが、この気持ちを走る方へと向かせて、最終的に勝負根性のある馬に育てたいと考えています。
2019年12月6日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
ときおりハミを取らないことがありましたが、最近は集中して、いい動きが続くようになりました。馬体は引き締まり、格好の良いシルエットになってきました。欲をいえば、トモにボリュームが出てくれば、さらに良くなってきそうです。気性は我の強さがあり、調教を進めてきてピリッとした面が出てきました。気持ちが煮詰まらないように注意を払っていきます。
2020年1月6日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
坂路では前向きで良い動きを見せていますが、少しペースを上げたこともあり、終いの脚が少し甘くなる時があります。ただ、成長のスピードが早いほうではない中で、これだけ動けているので、まったく気にしてはいません。馬体はここにきて筋肉の量が増えた印象を受けます。気性は自己主張の強いタイプですが、走る時に集中しているので、プラスに働きそうです。
2020年2月7日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
先月下旬から左飛節後腫の症状がみられるために、ウォーキングマシン、トレッドミルの運動にとどめています。症状がみられるまでは、屋内坂路コースでハロン15~16秒のキャンターでしっかりと乗り込んでいました。騎乗時は行きっぷりが良く、背中が柔らかく、上々の動きをみせていました。少しテンションの上がりやすい面があるので、今回の休養で気持ちのリフレッシュが促されるのではとみています。
2020年3月6日のサンデーサラブレッドクラブ公式ホームページより引用させていただきました。
長所としては、乗り味の柔らかさや行きっぷりの良さが騎乗者から指摘されていて、上々の動きを見せている。
課題は気性にある。テンションが高くなりやすく、我が強い。
レースに行っての折り合いやゲートの不安が心配される。
ペースを上げたると終いの脚が少し甘くなる時がある、というのも懸念材料だ。
気性については、父のドゥラメンテも育成過程でクラブホームページで再三指摘されていた。
これがよい方向で出れば、ドゥラメンテ独特の末脚の爆発力につながるが、悪いほうにいくと、出遅れやレースの折り合いに影響する。
父ドゥラメンテもデビューの新馬戦で出遅れて2着に敗れた。
気性面は馬具などでいくぶんコントロールできる面もあるが、根本的な部分ではなかなか改善されにくく矯正が難しい問題ではある。
(4)アゼルスタンの調教動画を見ての評価
●2019年12月11日の調教動画(ラップは17.5-16.1-16.2 3F49.8)
集団の中で1頭だけ最後を追走。
気性面でまだ馬ごみに入れるのに問題があるからだろう。
常歩の段階でも我の強さがうかがえる。
この時期は動きそのものよりも、きちんとまっすぐ前を向いて気持ちを集中させて走れるか、騎乗者とのコミュニケーションはとれているか、などといった基礎的な面がしっかりと整っているかを評価する段階だ。
こういった観点からみると、やや不安を残す内容に感じられた。
●2020年2月28日の調教動画(ラップは16.4-14.6-14.5 3F45.5)
タイムは前回(2019年12月11日)のものより格段に速くなっている。
メニューがハードになって、歯を食いしばって坂路を登っている。
首使いや進路の取り方で少しこたえている様子が見て取れる。
その反動で、先月(2月)下旬から左飛節が腫れて、坂路調教はお休みしてウォーキングマシン、トレッドミルの運動にとどめた。
早期入厩がかかる育成のこの時期は若馬にとって正念場だ。
ここでふるい分けされた頑強でへこたれない馬たちが北海道から本州に第一陣の移動をしてデビューに備える。
アゼルスタンはもう少し様子を見ながらになりそうだ。
ひと休み入って、次の坂路調教で馬がどう変わってくるかが大きなポイントとなるだろう。
現時点の評価としては、ABCのB評価といった具合か。
(5)アゼルスタンのまとめ
母のイプスウィッチはフランスのG3ヴィシー大賞(芝2000m)、G3ラクープ賞(芝2000m)をともに2着。
日本に輸入されて産駒からいまのところ活躍馬は出ていない。
イプスウイッチの父はDanehill Dancerで、Danzig→デインヒル→Danehill Dancerとつながる血の流れに4代前にSadler’s Wellsが加わる血統構成は繁殖牝馬の社台ファームのアーヴェイと同じ。
アーヴェイの子どもでは今のところサトノラディウス (牡馬、2016年生まれ、父ディープインパクト、4勝、中央現役)が一番活躍している馬だ。
そんなわけで、アゼルスタンの目標はこのサトノラディウスを越えることだ。
(目標が小さくてすいません)
その前にまずは無事にデビューを果たして、勝ち上がること。
そのあとは一戦一戦を大事に使って、春のクラシックトライアルに出走できれば取りあえずの成果は達成と考えている。
今の時期、夢はでっかく、目標もクラシック制覇というところなんだろう。
冷や水をかけるようで申し訳ありません。
この馬に出資していない第三者の目で書かせてもらった感想が以上です。
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