前回の「【人気の理由】【レネットグルーヴの19】話題の馬は走るのか④サンデーサラブレッドクラブ2020募集」では、今年の社台募集馬で、ハービンジャー産駒が人気になる理由と背景を考察した。
この主張に対して、めがね君には不満があるようだ。
(1)出資馬を選ぶ際に気をつけること
君の記事を読ませてもらったけど、相変わらずだねw
なんだよ、その嫌味たっぷりな言い方は。
だって、そうじゃないか。2017年にハービンジャー産駒のブレイクがあった。そこで翌年(2018年)に生産界では、ハービンジャーの種付けに質量の変化があった、だなんてみんな知ってる常識だよ。底が浅いというか、近視眼的というか(ため息)。
そんなにボロクソ言うことないじゃないか。だってボクの言うことは当たっている。間違いない、と君は認めていることにはなるんじゃないか。
まあ、そうムキになるなよ。僕が言いたいのは、そんな目先のことじゃなくて、もっと先のことを見据えて考えようよ、そういうことなんだ。
でも、今年度の出資馬を選ぶというのは、選んだ馬が新馬に出て古馬になって、その馬が二、三年先にどういうふうになっているかを想像して選ぶのだから、君の言うことと矛盾しないと思うけどなあ。
それと、一番大切なのは、自分が出資する馬1頭のことだけを考えるんじゃないってことなんだ。
???
つまり、出資馬が2歳新馬戦を経て、3歳クラシックを迎え、やがて古馬になる。そのときの中央競馬の種牡馬全体の動きのなかで、自分の出資馬やその種牡馬の全体的な位置を把握する、ってことが一番大切なことになる。相手あっての競馬っだから、相対的かつ全体的な視野を持たなければならない。
君の言ってることはわかる。でも、いったいどうやって?
(2)「種牡馬の適性表」から読み取る今後の種牡馬の見取り図
そこで、今日は資料をつくってきた。
この「種牡馬の適性表」は、2019~2020年の種牡馬リーディング上位の馬を抽出して作成したものだよ。
なんか、難しくて見方がよくわからないなあ。
縦軸が距離の適性を示している。表の上にいくにしたがってその種牡馬の適性距離が伸びる。横軸は芝・ダートの適性を表している。軸の左に向かえば芝適性が増し、右にいけばそれだけダート馬の要素が強いことを表す。
ふーん。それじゃあ、この表で何がわかるの?
これで何がわかるかというと、その種牡馬の全体的な構図のなかの位置や競合する種牡馬を視覚的につかむことができる。
でも、ディープインパクトとキングカメハメハは去年相次いで死んじゃったね。
ステイゴールドやゴールドアリュールも今はいない。だから、2、3年後のことを考えるにはこの4頭を除いて、種牡馬の構図を見直す必要がある。そこで、ディープインパクトとキングカメハメハ、ステイゴールドやゴールドアリュールを除いた「種牡馬の適性表」も作ってある。それが下のものだよ。
種牡馬の頭についている番号は2020年5月17日現在の種牡馬リーディング順位だ。ただし、ディープインパクトとキングカメハメハ、ステイゴールドやゴールドアリュールを除外した順位に修正している。(以下、この表を「適性マップ」と呼ぶ)
(3)モーリス産駒とドゥラメンテ産駒の適性
あれ、モーリスとドゥラメンテは載っていないね。
いいことに気づいたね。この新種牡馬がこの「種牡馬の適性表」のどこに位置付られるか、これを考えるのが重要な作業となる。
ふーん。それじゃあ、モーリスとドゥラメンテはどこに入るんだい?
モーリスとドゥラメンテ、それぞれの現役時代の競走成績をもとに平均勝ち距離を計算してつくった。モーリスもドゥラメンテも現役時代は芝コースしか走らなかったから、「適性マップ」では、両馬とも芝に偏っているけれど、産駒はダート適性のある馬も出るから、実際はこの位置よりも右側にずれるだろう。また、ドゥラメンテ産駒の距離適性がハーツクライ産駒よりも長いというのもにわかに信じ難い。実際はもう少し短く、1800前後になると予測しているよ。
ドゥラメンテとモーリスは見事に「適性マップ」の上下に分かれているね。
そうだね、生産者サイドもドゥラメンテ産駒とモーリス産駒が同じ牧場どうしで勝ち星のつぶし合いをしたくないから、あえて住み分けをイメージさせて、セットで売り出しているんだろうね。
さすがに社台グループは頭がいい。
でもね、これはあくまでもドゥラメンテ産駒もモーリス産駒の適性は父親の現役時代の競走成績をそっくり受け継いでいるという仮定に基づいた上での話だから、産駒が実際走ってみて、この「適性マップ」の通りの配置に本当になるかどうかは、正直、僕も自信はない。サッカーボーイやアドマイヤムーン産駒のように、父親の現役時代の成績とは真逆に出ている種牡馬もいるから、サラブレッドの血統はミステリーといっていいよ。
それじゃあ、仮定の話でいいから続けて。
ポイントは2つある。ディープ&キンカメ亡き後の空白、つまりニッチをどの種牡馬が支配するか、ということが第一。それから、モーリスとドゥラメンテが両馬の「適性マップ」で重なる、つまり競合する種牡馬の質と量とを考えて、両馬に勝算がどのくらいあるかということが二番目。ただし、これからもブリックスアンドモルタルのような新規の種牡馬の産駒が年を重ねてどんどんデビューするから、こうした馬たちとの競合も考え合わせなければならない。
確かに、ディープとキンカメが抜けた影響は大きいよね。生産界では、ズボッと大きな穴が開いたも同然だから。でも、この表を見ると、どの馬も役者不足のような気がするなあ。
だからこそ、サラブレッドの生産界では、いま熾烈な競争が始まっている。社台グループでは、さっそくモーリスとドゥラメンテを売り出そうとして、キャンペーンが進行中だ。この2頭がシェアを食い合わないように、適性以外でも、種付け料や種付け数の面で差別化を図っている。それは以前、両馬の種付け数や種付け料の推移を論じながら、このブログで思うところを書いた。
それじゃあ、ディープ&キンカメ世代で競争に勝つ種牡馬はどの馬なの?
それを今から論じようとしている。今日はここまで。話は次回に続くよ。
【対談】ポストディープ&キンカメ世代を担う種牡馬は何か?(第2回)に続く
👇ランキングをクリックしていただければ幸いです。