(1)ブリックスアンドモルタルの最後の疑問
前回は、社台SSが有入した種牡馬のうち、成功した馬(フレンチデピュティ、ウォーエンブレム、スウェプトオーヴァーボード)たちの特徴として2点を指摘した。
そして、前々回の成功種牡馬の2つの要因を加えると、輸入種牡馬が成功する条件として合計4点、出そろった。
①アメリカから導入した
② Mr. Prospector 系である
③芝・ダート兼用馬
④短距離から長距離までのオールラウンダー
③と④については、ブリックスアンドモルタル産駒がまだデビューしていないこともあり、ここでは確定的なことは書けない。
そこで、当面①②が検討材料となる。
ブリックスアンドモルタルは①の条件は満たす。
しかし、同馬は Storm Bird 系であるので、 Mr. Prospector 系とは異なる。
ということで、 Storm Bird 系 が本当に日本の馬場に合うのかが、一番の課題だと思っている。
「 ブリックスアンドモルタル 5つの疑問」というテーマで深堀りしてきたが、いよいよ最後の疑問はズバリ「Storm Bird 系 って日本の馬場に合うの」というテーマでブリモルの可能性と限界について追及してゆきたい。
(2) Storm Bird 産駒の能力と適性
再び、ブリックスアンドモルタルの5代血統表を下に掲げる。
今回のテーマの構成としては、 ブリックスアンドモルタルの父系を遡って、3代前の Storm Bird 、祖父の Storm Cat 、父の Giant’s Causeway という流れで日本の馬場適性を中心に考察を進めてゆく予定だ。
まず今回は、 Storm Bird から。
自身の競走馬時代の重賞戦優勝歴はG3を2勝、G2を1勝、G1は英国のデューハーストS(芝1400m)があるのみで、これだけ見るとG1馬としてはあまり目立つ成績ではない。
Storm Bird の全盛期は2歳で、このとき5戦全勝の成績を収めてイギリスとアイルランドの2歳牡馬チャンピオンの座についたが、2歳の10月以降、1年近くの休養を挟んで臨んだG3のプランスドランジュ賞で5着を最後に引退した。
途中でアクシデントに見舞われた不運もあるが、 Storm Bird は早熟で早枯れという評価が一般的で、この傾向は産駒の Storm Cat にもみられる。
ブリックスアンドモルタルの種牡馬としての能力を考えるとき、この「早熟問題」がつきまとうことになるだろう。
話を Storm Bird に戻すと、この馬は種牡馬になって産駒から10頭のG1馬を輩出した。
以下に掲げる。なお、主なG1勝ち鞍も合わせて添えた。
Indian Skimmer(USA):1987 仏国 仏オークスなどG1を5勝
Summer Squall(USA):プリークネスS などG1を2勝
Balanchine(USA):愛ダービー、英オークス、英1000ギニー
Classy Mirage(USA):バレリーナH
Pacific Squall(USA):ハリウッドオークス
Magical Wonder(USA):ジャンプラ賞
Bluebird(USA):キングズスタンドS
プリンスオブバーズ(USA):愛2000ギニー
Storm Cat(USA):ヤングアメリカS
Personal Hope(USA):サンタアニタダービー
このほかG2,G3,リステッド重賞などを加えると、50頭以上の優勝馬を出している。繁殖牝馬の父としても優秀で、100頭以上のステークスウイナーを出し、Northen Dancer の血を世界に広めた。
産駒の多くはヨーロッパの芝に適性を見せている。
一方、産駒の Storm Cat を通してアメリカのダート競馬に Storm Bird の血が広がりを見せ、日本には父系としては、 エイシンアポロンを出した Giant’s Causeway へとつながる。
Storm Bird → Storm Cat の血はさらに母系を通してロードカナロアへと受け継がれることとなる。
(3)日本での Storm Bird 産駒の成績
Storm Bird 産駒は主に外国産馬か持ち込み馬として日本に迎えられた。
当時はダービーなどの3歳クラシック競走はいわゆるマル外には開放されておらず、芝馬とみなされていた Storm Bird 産駒を 日本に入れても、面白みに欠けることも手伝って、出走頭数は24頭と少ない。
それでも、半数以上の馬が勝ち上がり、その中から重賞優勝馬のスキーキャプテンを出しているのだから、 Storm Bird の種牡馬としてのポテンシャルの高さをうかがい知ることができる。
この表からは、 Storm Bird 産駒は ダート適性もあることがわかる。
この適性が産駒の Storm Cat を通して、 Storm Bird 系の馬たちがダート界を席巻する背景となる。
Storm Cat 系については次回詳しく解説することにして、日本における代表的な Storm Bird 系の 馬として、ワンダーアキュート(2006年生まれ、牡、父カリズマティック、JRAではG2東海ステークス(ダート1900m)G3武蔵のステークス(ダート1600m)、Gシリウスステークス(ダート2000m)の3勝。JBCクラシック、帝王賞、かしわ記念など地方のダートG1を3勝)の名前を挙げることができる。
勝ち鞍はダートの1600~2100mに集中しており、ダート中距離の雄として2009~2015年まで6年間、満遍なく勝利を上げた。
カリズマティック は父がStorm Bird 産駒のSummer Squall。
ケンタッキーダービーとプリークネスS の2つのG1を勝っている。アメリカのダート2冠馬ということになる。
Storm Bird 系はアメリカのダートと相性がよく、日本のダート適性も良好だ。
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この Storm Bird の持つ芝・ダート兼用の適性をブリックスアンドモルタルも受け継いでいてくれれば、この馬が成功種牡馬に仲間入りする可能性はグンと高くなる。
【 Storm Bird 系 って日本の馬場に合うの?】 ブリックスアンドモルタルの疑問 ⑤ー1 終わり
次回は【 Storm Cat 系につきまとう不安】 ブリックスアンドモルタルの疑問 ⑤ー 2 へ続く
【攻略法】ブリックスアンドモルタル産駒
https://note.com/soumanosuikoden/n/n6d70fac97395
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