(1)はじめに
前回「【米国芝G1のレベルって?】ブリックスアンドモルタルの疑問③ー1」の続き。
ブリックスアンドモルタルの疑問③では、米国の芝G1馬の種牡馬としての実力に疑念を示し、ブリックスアンドモルタルが勝った芝G1レースの勝ち馬の種牡馬としての成績を調べている。
今回はいよいよブリーダーズカップ・ターフとアーリントンミリオンステークス優勝馬について触れる。
(2) ブリーダーズカップ・ターフ優勝の名馬でも
まずは ブリーダーズカップ・ターフ から。
40年近くの歴史があり、歴代優勝馬も近年ではあの女傑エネイブルも名前を連ねる伝統のレースである。
過去の歴代優勝馬の名前を眺めると、マニラ、シアトリカル、チーフベアハート、ティッカネン、コタシャーン、ピルサドスキーなどの往年の名馬や日本にもゆかりのある馬たちの名前が散見できる。
しかし、ここ20年を見ると種牡馬として成功した馬はわずかにハイシャパラルとイングリッシュチャンネルの2頭という惨状だ。
ブリダースカップ・ターフ優勝の名馬でも、いざ種牡馬となると話は別のようだ。
日本との関係でみると、 ハイシャパラル 産駒の名前は72頭を数えることができる(net.keiba参照)が、このうち重賞優勝馬はゼロ。
獲得賞金第一位が4,279万円のスワン(メス、2005年生まれ、20戦3勝)で、当時の1000万下止まり。
第二位は3,454万円のハイカックウ( メス、2005年生まれ、19戦2勝 )。
この ハイカックウ は ハイシャパラル 産駒 という良血が当時も注目されていて、人気になるのだが、勝ちきれず2着、3着に甘んじていた。
詰めの甘さが残る印象を持つ。
2008年、09年と ブリーダーズカップ・ターフ を連勝したコンデュイットは日本に導入された。
繋養先はビッグレッドファームで、2013年よりデビューした産駒のうち平地の重賞優勝馬はなし(中央競馬)。
障害競走でわずかにシンキングダンサーが2017年に東京ジャンプステークスを勝っただけだった。
このコンデュイット 2011年から16年にかけて6年間、195頭をJRAに出走させて、勝ち馬43頭。
種牡馬リーディングでは、2011年の39位が最高であった。
(3)ケープブランコも日本では不振
次に アーリントンミリオンステークス優勝馬 について、過去20年に遡って見てみることにする。
もう30年前になるが、1994年(第14回)の優勝馬パラダイスクリークは日本に導入され、産駒からアサカディフィート(セ、04 G3中山金杯(芝2000)など)、カネツフルーヴ(牡、02 G1帝王賞(ダ2000)など、テイエムプリキュア(メス、05 G1阪神ジュベナイルF(芝1600))など多くの活躍馬を出して成功した。
ところが、過去20年となると、優勝馬の子どもが日本で走ることはあっても、なかなか結果を出せないようになった。
ジオポンティはマンハッタンステークスの優勝馬のところでも挙げた。
ケープブランコ、ビーチパトロールの2頭は日本にも導入されている。
ケープブランコ 産駒では、重賞勝ち馬は1頭。
ランスオブプラーナ(牡)が2019年の G3 毎日杯 (芝1800)を勝っている。
2013年から20年にかけて8年間、134頭をJRAに出走させて、勝ち馬21頭。
2016年の40位が最高であった。
(4) ビーチパトロール 産駒は去年デビュー
次に ビーチパトロール は去年(2022年)から産駒が中央でデビューして今日(2023年5月11日)までで8頭が勝利を収めている(全9勝)。
このうちシーウィザード(2020年生まれ、牡、3歳)が2022年の新潟2歳ステークスで3着にきている。
2022年のJRAファーストシーズンサイアーランキング(獲得賞金順)では、 ビーチパトロール は 6位となっている。
産駒の全9勝のうち、芝7勝、ダート2勝になる。
ここまでは父の ビーチパトロールの芝適性がそのまま日本の馬場でも生かされるとみていい。
ただ、古馬になり、芝で頭うちの馬たちがダートに転向するようになると、この傾向は変わってくるかもしれない。
だから、 ビーチパトロール産駒は芝馬と決めつけないで、しばらくは様子見をするほうがいいだろう。
最後に、オールドフォレスター・ターフクラシックステークスに優勝した主な馬の種牡馬成績(過去20年)も付け足しておく。
2006年の優勝馬 English Channel は2007年のブリーダーズカップ・ターフの優勝馬イングリッシュチャンネルと同じ馬だ。
欧文表記とカタカナ表記で統一がとれていなくて申し訳ない。
この オールドフォレスター・ターフクラシックステークス優勝馬の Yoshida は クラブともなじみが深い。
社台の2歳馬デュアルウィルダー(牡、2021年生まれ)はこの Yoshida 産駒でこれからデビューに臨む。
また今年(2023年)の社台募集馬として半弟のヒルダズパッションの2022(牡、父キズナ)の名前がリストに見える。
(5)結論:アメリカ芝G1を勝った馬の種牡馬の価値は微妙
以上をまとめると、ブリックスアンドモルタルが勝ったアメリカ芝G1競走5レースの勝ち馬(過去20年)を見ると、種牡馬として成功した馬(産駒にG1勝ち馬を複数出している)は、以下の頭にすぎない
ハイシャパラル、シロッコ、イングリッシュチャンネル( English Channel )
また、優勝馬のうち、 ハイシャパラル 、ケープブランコ、 コンデュイット の産駒は日本でも走っているが、このうち重賞を勝てたのは1頭というさんざんな結果である。
Yoshida 産駒 はこれからも何頭か日本に入ってくるだろう。
こちらは結果待ちというところになる。
ブリックスアンドモルタルはこのような轍(わだち)にはまらずに、日本で結果を出せるだろうか。
ここまで書いてきて、可能性はかなり絶望的に思えてしまう。
けれど、読者のみなさん、社台・サンデーの会員のみなさんを絶望させることが私の本意ではありません。
いま準備しているnoteブログの記事では、 ブリックスアンドモルタル 産駒に対する評価は絶望とは違うものになります。
以上、「【絶望的?】ブリックスアンドモルタルの疑問③ー2」終わり
次回は「【そもそも海外から導入される新種牡馬の大半が失敗】 ブリックスアンドモルタルの疑問 ④」に続く。
👇 読んでください。よろしくお願いします。
【攻略法】ブリックスアンドモルタル産駒|【1口馬主講座】トンボのめがね (note.com)
https://note.com/soumanosuikoden/n/n6d70fac97395
「サンデーのクロスで1口馬主を極める」