(1)ボルドグフーシュの衝撃
社台サラブレッドクラブの募集馬、ボルドグフーシュが2022年の菊花賞で7番人気ながら2着に突っ込んできた。その後も、有馬記念、阪神大章典というビッグレースで連続して2着。
これは私たち1口馬主の会員にとって、ちょっとした話題を生んだ。
まず ボルドグフーシュ の1口50万円という募集額。
この値段は牡馬のほぼ最低価格になる。
安かろう、悪かろうが刷り込まれているサラブレット市場で、こんな安い馬でも夢が見れるんだ。
こういった羨望に近い衝撃。
ドゥラメンテやモーリスという社台グループの二枚看板が売り出されている中で、スクリーンヒーロー産駒というマイナー種牡馬に光るが当たった衝撃。
スクリーンヒーロー は2008年のG1ジャパンカップの覇者で、祖母にダイナアクトレスを持つ良血。
この活躍馬に対して「 マイナー種牡馬 」というのも失礼だが、名馬・良血がキラ星のように並ぶスター軍団の中で、 スクリーンヒーロー の立ち位置は「大衆向け」の「お手軽商品」で、1勝できれば御の字ぐらいの扱いで、募集時には正直、私はノーマークだった。
さらにさらに、 ボルドグフーシュ はサンデーサイレンスの3×3という強いクロスを持っていて、こんなに血が濃ければ、何か悪い病気でも持っているのではないか、気性に問題があるのではないか。
そんな邪推が頭をよぎり、そのリスクの高さゆえ、手を出しにくい血統だった。
ところが、 そのボルドグフーシュ、 デビュー年こそ1勝止まりであったが、3歳を迎えると勝ち星を重ね、秋には大成長を遂げて、いまや獲得賞金3億円を超えるお化けをしてみせた。
それというのも、 ボルドグフーシュ が持つ3×3というインブリード(近親交配)がこの馬の活躍に隠された秘密の一端を担っている。
こう確信した私はサンデーサイレンスの3×3を持つ馬を本格的に調べてみようと思い立ったのであった。
(2) ボルドグフーシュの 血統の不思議
まずはボルドグフーシュの5代血統表を見ると、母父のLaymanという見慣れない文字が目に入る。
どうやらサンデーサイレンスの直子らしいが、欧文表記のところを見ると、日本産の馬ではない。
調べてみると、フランスや英国で走った馬のようで、生涯成績が9戦3勝。フランスのカブール賞、英国のソヴリン賞などの重賞を優勝するが、いずれもG3格のレース。
ボルドグフーシュ が活躍するまでは、国内ではまったく無名の馬だった。
(3)ヘンテコリンが活躍する?
それでは、ほかの サンデーサイレンスの3×3を持つ馬 の血統も見てみることにする。
上に掲げたトラスト( 2016年の札幌2歳 S(G3))の5代血統表でも、母父がエイシンサンディとあり、サンデーサイレンスの直子では、やや見慣れない名前の馬の名前が目に飛び込んでくる。
エイシンウイザードは重賞の優勝経験こそないものの、G2、G3格の重賞を何度も2着3着する優秀な牝馬で、その子の エイシンサンディ は未出走で、数いるサンデーサイレンスの後継種牡馬のなかでは、極めて地味な存在である。
この馬がステークスのウイナーであるトラストを引き出す重要なキーホースとなっている。
次に取り上げるのは、ヨヨギマックだ。
51戦5勝。中央ではオープンまで行っている。
獲得賞金は1億円を超え、ミリオンホースとして一応「活躍馬」の冠号をつけてもいいだろう。
現在は地方の園田で現役生活を継続している。
ヨヨギマックという、何やら大手ファストフードショップのようで名前が凄いが、この馬の5代血統表も凄い。
母父がサンデーウェル。
この馬1995年のセントライト記念(G2)を勝っているが、マヤノトップガンの菊花賞では17着に大敗している。
その後、勝ち星を1つも積み重ねることがないまま、2年後に引退。
それでもサンデーサイレンスの直子ということもあって種牡馬入りを果たす。
産駒で獲得賞金上位で見ると、チュードサンデー、マキノヒリュウといった地方で走った馬の名前が見えるが、はっきり言って、 サンデーウェル は種牡馬としてはB級、C級といった出来という評価を下してよい。
しかし、孫の世代から中央のオープン馬 ヨヨギマック を出す。
上にまとめてみたが、スクリーンヒーロー産駒のサンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬で、獲得賞金1億円以上を稼いだ馬の母系は、いずれもマイナーなサンデーサイレンスの直子となっている。
身も蓋もない言い方をすれば、スクリーンヒーローはヘンテコリンな母父とかけ合わせれば結果を出す。
B級・C級の母父でもいいなら、ディープインパクトやハーツクライといった超良血馬の繁殖牝馬をかけ合わせれば、強い スクリーンヒーロー産駒 を生むことができる。
普通はすぐにそう考えてしまう。
しかし、現実は異なる。
それは、何故か。
続きは次回に詳しく考察する。
【お知らせ】
今回のサンデーサイレンスの3×3、4×3、3×4のクロスを持つ馬で、どんな馬が走るのか、緻密に考察して有料記事にまとめてみました。
特に今年の社台・サンデー・G1サラブレッドクラブの1口馬主での選馬で参考になる情報が満載です。
皆様のご購読をよろしくお願いします。
「サンデーのサンデーのクロスで1口馬主を極める」