(1)繁殖牝馬シルヴァーカップ
昨日(2019年6月29日)の中京のメイン白川郷ステークス(3歳以上、3勝クラス(1600万円以下) ダート1,800メートル) で2着にきたドラゴンカップ(牡馬、2013年生まれ、6歳、父ステイゴールド、栗東・角居勝彦厩舎)の血統を調べているうちに思い出したことがある。
この馬の母シルヴァーカップ は、社台ファームの繁殖牝馬で毎年社台・サンデーサラブレッドクラブから送られてくる名簿でたびたび目にした馬で、以前から注目していた。
現役時代の競走成績は8勝。イタリアのG2・レジーナエレナ賞(伊1000ギニー)のほかサンゴルゴニオH、ブエナヴィスタH、サンタアナHなどアメリカのG2も3つ勝っている。
G1勝ちこそないが、欧米の重賞で堅実な成績を残しているので産駒がクラブで募集されないか毎年、期待していた。
(2)シルヴァーカップの産駒成績
初仔:シルヴァースプーン (牝馬、2008年生まれ、父アグネスタキオン)オーナーズ、中央未勝利、 地方2勝
2番仔:ニーレンベルギア (牝馬、2009年生まれ、父アグネスタキオン) オーナーズ、2勝
3番仔:シルヴァーグレイス (牝馬、2010年生まれ、父ハーツクライ) 吉田千津、4勝
4番仔:カレンリスベット (牝馬、2011年生まれ、父マンハッタンカフェ)個人馬主、 4勝
5番仔:カフェラテ (牝馬、2012年生まれ、父マンハッタンカフェ) 個人馬主、中央未勝利、地方3勝
6番仔:ドラゴンカップ (牡馬、2013年生まれ、父ステイゴールド) 個人馬主、3勝、中央現役
7番仔:ブランニューカップ (牝馬、2014年生まれ、父マンハッタンカフェ) 吉田千津、1勝
8番仔:ルッジェーロ (牡馬、2015年生まれ、父キンシャサノキセキ) 個人馬主、 3勝、中央現役
9番仔:アルジェンタータ (牝馬、2016年生まれ、父ハーツクライ) グリーンファーム、未勝利、中央現役
10番仔:ラルナブリラーレ (牝馬、2017年生まれ、父ハーツクライ)社台サラブレッドクラブ1口60万円、 中央現役
シルヴァーカップは仔出しがよくて、実に10頭もの産駒を送りだしている。
重賞勝ち馬こそないが、デビューした産駒は2頭を除いて勝ちあがり、1~4勝の勝ち鞍を挙げている。
ただ残念ながら、オーナーズでは募集されたことがあっても、たいがいは個人馬主でクラブの募集にかけられることはほとんどなかった。
それが、最近立て続けに1口馬主クラブから募集されている。
2017年にアルジェンタータがグリーンファームから、2018年にラルナブリラーレが社台サラブレッドクラブから募集にかけられた。
この2頭は今後、追いかけていきたい馬だ。
(3)社台ファームは伊1000ギニー優勝馬を買いあさっている
このシルヴァーカップを調べていて気が付いたのは、この馬が優勝したレジーナエレナ賞(伊1000ギニー)の歴代勝ち馬を1988年以降、社台ファームやノーザンファームが繁殖牝馬として購入している事実だ。
これはnetkeiba.comのシルヴァーカップの掲示板で「ついんP」さんの書き込みを見てご教示を受けた。
「ついんP」さんは血統や海外競馬に詳しく、いつも参考にさせてもらっている。この機会にこの場で御礼申し上げます。
以下に社台グループが購入したレジーナエレナ賞(伊1000ギニー)の歴代勝ち馬と主な産駒を調べた表を掲げます。
勝利年 勝利馬:主な産駒
1988年 ロンリーバード:ロンリーウルフ (牡馬、1996年生まれ、父A.P. Indy) 1勝、地方1勝
1989年 ミスセクレト: ディーバ (牝馬、1997年生まれ、父Crafty
1990年 アトール: サンデーピクニック (牝馬、1996年生まれ、父サンデーサイレンス) 2勝、海外2勝 (G3クレオパトル賞)1991年 アランヴァンナ:ピサノサンデー (牝馬、1996年生まれ、父サンデーサイレンス) 2勝
1993年 アンセストラルダンサー: ゼンノドライバー (牡馬、1997年生まれ、父フォーティナイナー) 4勝
1994年 エリンバード: エリンコート (牝馬、2008年生まれ、父デュランダル) 4勝(G1優駿牝馬)
1995年 オリンピアデュカキス:オリンピアンナイト (牡馬、2003年生まれ、父ブライアンズタイム) 5勝
1996年 ビューティトゥペトリオロ:ランフォーウィン (牡馬、2002年生まれ、父クロコルージュ) 1勝
1997年 ニコーファーリー: ワールドジャック (牡馬、2011年生まれ、父ノボジャック) 地方2勝
1999年 シェンク:マルカシェンク( 牡馬、2003年生まれ、サンデーサイレンス) 5勝(G2デイリー杯2歳S、G3関屋記念)
2000年 スーア:ゴールドマイン (セン馬、2004年生まれ、父ダンスインザダーク) 4勝、地方9勝
2004年 ルンバロッカ:アウトオブシャドウ (牡馬、2010年生まれ、父ハーツクライ) 4勝
2005年 シルヴァーカップ:シルヴァーグレイス (牝馬、2010年生まれ、父ハーツクライ) 吉田千津、4勝2006年ウィンドハック: ブランドベルグ (セン馬、2012年生まれ、父ネオユニヴァース) 4勝
2009年マイスウィートベイビー: ダノンスウィート (牝馬、2014年生まれ、父ステイゴールド)未勝利
2010年エヴァディングタンペット :ストロベリームーン (牝馬、2014年生まれ、父キンシャサノキセキ) 4勝、中央現役
2011年ステイアライヴ: ステイホット (牝馬、2016年生まれ、父キャプテントゥーレ) 1勝、中央現役
2012年チェリーコレクト: ダノングレース (牝馬、2015年生まれ、父ディープインパクト) 4勝、中央現役
(5)伊1000ギニー優勝馬をノーザンファームが買うようになった
繁殖牝馬のおおまかな傾向として、社台ファームは欧州の重賞競走を勝った良血牝馬、ノーザンファームはアメリカダートG1優勝馬の優秀な牝馬を繁殖牝馬として導入するむきが見られる。
これはある種の棲み分けで、経営としてはリスクの分散をはかっていると考えられる。
シルヴァーカップはイタリアの1000ギニーを勝ったが、アイルランドの生産だ。
1988年以降、社台ファームが伊1000ギニー優勝馬を繁殖牝馬として購入しているのは、こうした生産牧場の経営戦略として説明できる。
社台が欧州の重賞競走の中でイタリアの1000ギニーにこだわり続けた理由はわからないが、しばらく結果が出ない年が続き、 1994年の優勝馬 エリンバードから念願のクラシック馬エリンコート を輩出した。
その後も社台はイタリアの1000ギニー優勝馬をほぼ毎年買い続けるが2006年のウィンドハックでいったん途絶えた。
その後2009年の優勝馬マイスウィートベイビーを購入したのは社台ではなくノーザンファームだった。
2010年のエヴァディングタンペットと2011年のステイアライヴはまた社台の購入に戻り、2012年のチェリーコレクトはノーザンファームが再び購入した。
社台の吉田照哉社長とノーザンの吉田勝己社長との間にどのような密約が交わされたかは秘密のベールに閉ざされているが、この大きな変化は注目に値する。
(6)チェリーコレクトの18が大当たりの予感
こうした背景があって、今年(2019年)サンデーサラブレッドクラブからチェリーコレクトの18(父ディープインパクト、1口250万円)が募集された
今年のサンデーサンデーサラブレッドクラブでチェリーコレクトの18は第一希望で40口には満たなかったが、第一次募集で満口になった。
これはオーナーズや複数出資の実績上位者が第二希望、第三希望でこの馬を希望したと推測される。
グランアレグリアもそうだが、第一希望が40口に満たない馬から毎年、大当たりが出る。
この馬もこうした条件に当てはまる。
イタリアの1000ギニー優勝馬からエリンコートに続いて2番目のクラシック優勝馬、しかも牡馬が出る臭いがプンプン漂っている。
先日、1つ上の全兄ワーケアが新馬戦で圧勝した。
あのシーンを目の当たりにして、予感は確信に変わった。
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