「大地の芸術祭2018 越後妻有アートトリエンナーレ」で一番印象に残った作品がある。
それがこれ👇
なんじゃ、こりゃ?
信濃川に面した河岸段丘の崖にただ足場を組んだだけ。
そこに、「礫岩conglomerate.」「信濃川はかつて現在より25m高い位置を流れていた」などといった文字看板が掲げられている。
この作品の作家は磯辺行久。
「大地の芸術祭2018 越後妻有アートトリエンナーレ」は今回で7回目を迎えるが、磯辺氏は第1回から参加している。
一番、古参のアーティスト。というより、この越後妻有アートトリエンナーレの基本コンセプトの柱をつくった人物といってよい。
新潟県で芸術祭を開催するに際して、総合ディレクターの北川フラム氏は、ニューヨークでエコロジカル・プランニングの環境アートを学んだ磯辺行久氏にこの越後妻有の地の環境調査を依頼した。
オファーを受けた磯辺氏は妻有の風土を考える場合に、欠かすことのできない信濃川から出発しようという理念を抱く。
地盤・地形、気候、植生のすべてを信濃川が形作っている。
1999年、新潟県中里村で1万5千年前の地層から自然堤防が発掘され、むかしの信濃川はいまより25m高い位置を流れていたことが明らかになった。
つまり、川は流れているうちに、どんどん大地を深く削り、より低い位置に自らを沈めていく。
1万5千年の歳月は、地盤を25mも深く掘り進んでいった。
水の力というものは、途方もないパワーを秘めている。
さて、この作品は、1万5千年前の古信濃川の流路を鉄骨の骨組みで提示したものだ。足場の階段を上って、見学者は古信濃川が流れていたところまで実際に行けるようになっている。
天空に流れる、いにしえの信濃川を体感できるしかけだ。
この作品で教えられる前までは、信濃川がそんなに高いところを流れていたなんて、想像もつかないことだった。
むかしの川の流れは目には見えない。
これを視覚化することで、私たちの想像力に翼を与え、遥か1万5千年前の信濃川の流れが現前に蘇ることになる。
アートの力とは、こういうものだ。
見えないものを見えるようにする。
これはまさに芸術の本質に迫るものではないだろうか。
見えないものもあるんだよ
ふと、耳元で金子みすゞの詩が聞こえてくるような気がした。
星とたんぽぽ
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
(金子みすゞ)
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