(1)はじめに
「話題の馬は走るのか」のシリーズでは人気馬や会員の多くが気にかけている馬のレヴューを行っている。
前回の「【ワールドスケールの血統】【プレシャライジングの19】話題の馬は走るのか③サンデーサラブレッドクラブ2020募集」では、【プレシャライジングの19】の半姉のプレシャスゴールドの募集写真の脚元の問題点を指摘し、募集価格の低い馬に潜む危険性を再度考えてみた。
今回検討するレネットグルーヴの19(牡馬、父ハービンジャー)の募集価格は1口75万円(総額3000万円)。この価格は、下に掲げた兄たちと比べてもそれほど格安という印象はない。
・2歳上の全兄スピッツェンバーグ(父ハービンジャー、1口75万円/40口サンデーで募集、総額3000万円)
・1歳上の半兄ゾディアックサイン(父モーリス、1口:8万円/500口シルクで募集、総額4000万円)
全兄と同額で、ほぼ適性価格のように感じられる。
だから、というわけではないが、後で述べるように本馬(レネットグルーヴの19)は、募集馬のなかでそこそこの人気を集めることが予想される。
ドゥラメンテやモーリス産駒の話題性に比べると、一見地味なハービンジャー産駒の本馬がなぜ人気を集めるのか、その理由と活躍の可能性をさぐってみたい。
(2)レネットグルーヴの19の血統評価
本馬(レネットグルーヴの19)の母レネットグルーヴは、2010年生まれ。
父キングカメハメハで競走成績は23戦3勝 [3-3-1-16]。1000万下の条件馬ということになる。
この馬は、2011年にサンデーサラブレッドクラブから1口60万円で募集された。
募集時馬名「イントゥザグルーヴの10」は94票を集めてサンデーサラブレッドクラブで7番人気(全体で10番人気)であった。
イントゥザグルーヴの10(レネットグルーヴ)は母エアグルーヴの直仔で、クラブで募集にかかれば人気になる。
兄のイントゥザグルーヴの09(グルトップ [父キングカメハメハ])は最終で154票を集めて2番人気となった。
母系がエアグルーヴの血統はひ孫の代になっても人気が衰えない。
「馬は母系で走る」という格言を身をもって実践する会員がいかに多いかを物語っている。
先ほど紹介した本馬(レネットグルーヴの19)の兄のうち、1つ上のゾディアックサインは母の2番仔にあたり、2歳新馬でこれからデビューを迎える。
2つ上の全兄スピッツェンバーグは母の初仔で、競走成績は4戦0勝 [0-0-0-4]。
4戦ともオール7着で、いまのところ結果を出せていない。
その理由は次章で考える。
(3)レネットグルーヴの19人気の理由
レネットグルーヴの19が人気を集めるであろう根拠は、第一に前章で書いた、エアグルーヴから始まる母系の血統的背景である。
第二に、この馬の母レネットグルーヴが種付けをした2018年という年にある。
その前年にハービンジャー産駒のブレイクがあった。
産駒3頭があいついで芝のG1レースに優勝したのだ。
・ペルシアンナイト(3歳、牡馬、2017年マイルチャンピオンS)
・ディアドラ(3歳牝馬、2017年秋華賞)
・モズカッチャン(3歳牝馬、2017年エリザベス女王杯)
この2014年生まれ(上記の3頭が該当)というのは、ハービンジャー産駒の当たり年と言ってよい。
この快進撃を受けて生産界の変化が翌年(2018年)に見られる。
まずハービンジャーの種付け数が前年(2017年)の164頭から212頭へ増加
(+48、+29 %)。
種付け料も前年(2017年)の250万円から350万円と一気に100万円UP(上昇率140%)。
このような種牡馬ハービンジャーに対するブリーダーの評価は種付けの質量の変化となった現れた。
サンデーサラブレッドクラブの会員はこのような変化を見逃さない。
2018年に種付けたハービンジャーの子ども達が生まれた2019年の産駒を今年募集する。
2014年生まれを「ハービンジャー産駒第一の波」とするなら、2019年生まれはハービンジャー産駒が再びブレイクする「ハービンジャー産駒第二の波」と考えるわけだ。
ただ、これは私の考えではない。
2019年産のハービンジャー産駒が質量ともに良化しているというなら、レネットグルーヴの19の場合は兄のスピッツェンバーグもハービンジャー産駒であり、「生産界の変化」と関係するとは一概に言えないという理由だ。
2019年産のハービンジャー産駒を狙うとしたら、それまでディープインパクトやキングカメハメハなどリーディング上位の種牡馬につけていた一戦級の繁殖牝馬を突如、ハービンジャーに振り替えてきて生まれた産駒が狙い目だと思うが、いかに?
ともあれ、今年クラブで募集されるハービンジャー産駒のうちレネットグルーヴの19はかなりの人気を集めるであろうから、このままこの馬の解説を進める。
(4)兄のスピッツェンバーグが不振の理由
上の写真が全兄のスピッツェンバーグ(募集時馬名レネットグルーヴの17)の1歳募集時写真だ。
このレネットグルーヴの17のついては、当ブログで(2018年6月18日)の記事で取り上げているので、引用してみる。
このなか(母父キングカメハメハのリスト)から大当たりが出るかもしれない。掲示板で話題となっているハワイアンウインド(の2017)や私が第二希望で出したエレイン(の2017)などが名前を連ねているのが面白い。母父キングカメハメハはハービンジャーと相性がいいので、ゴールデンロッド(の2017)やレネットグルーヴ(の2017)などに触手が動く。
とくに馬体の良さからレネットグルーヴ(の2017)のほうに軍配が上がる。この馬は隠れ人気となるので、候補に挙げられた方は、希望順位を1つ上に上げられるほうが安全かと。
この記事のなかで2018年のサンデーサラブレッドクラブ募集馬でハービンジャー産駒の母父キンカメ2頭の名前をあげている。
ゴールデンロッドの2017は社台サラブレッドクラブで募集されたゴールデンスターズで、競走成績は2戦0勝 [0-0-0-2](16着→12着)。
レネットグルーヴの2017(スピッツェンバーグ)のほうがまだまし(7着→7着→7着→7着)だが、この年のハービンジャー産駒は不作だった。
追記.この記事を書いた(5月16日<土>)直後、新潟5レースで10番人気のゴールデンスターズが勝ったマイネルコロンブス(13番人気)の2着に突っ込んできて、3連単130万馬券(1,311,990円)を演出した。
ハービンジャー産駒というより、現3歳の社台・サンデーの所属馬は総じて不振という言い方のほうが正確だろう。
ともあれ、いま冷静にスピッツェンバーグ(レネットグルーヴの17)の1歳募集時写真を眺めると、全体的に未熟さを残しており、トモの発達もいまひとつといった印象だ。
この馬を好意的に評価するのは、綺麗な栗毛に惑わされているようだ。
スピッツェンバーグの育成過程をサンデーサラブレッドクラブの公式ホームページで追ってみる。
・「気持ちがカリカリとして、力んでしまう」(2019年1月4日)
・「チャカチャカする時がある」(2019年2月1日)
・「気持ちもオン、オフの切り替えがあまり上手ではない」(2019年4月5日)
どうも気性に課題があるようだ。
その不安は現実のものとなる。
5月に入厩してゲート試験合格後にNF天栄に放牧して調整中、「先週末に転んで尻もちをついてしまい、右トモを打撲」(2019年6月28日)というアクシデントに見舞われ、デビューが大幅に遅れた。
結局、約4か月後の10月15日(火)東京5R・芝2000m戦に55kg岩田康誠騎手で出走・デビューし、勝ち馬から1秒4差の7着ということで、良好なパフォーマンスにつながっていかない結果となった。
本馬(レネットグルーヴの19)はスピッツェンバーグの全弟ということで、こうした気性を共有していないかチェックする必要がある。
如何せん今年のツアーは中止ということになり、その機会が失われて何ともどかしい。
(5)まとめと評価
最後に本馬(レネットグルーヴの19)の解説のまとめとして、兄スピッツェンバーグの測尺を紹介して締めくくることにしたい。
1歳募集時におけるスピッツェンバーグの測尺は3項目中2項目に合致しており、馬体のポテンシャルは高い。
ただ、先述したように、気性に課題があることが、スピッツェンバーグの勝ち上がりを遅らせている。
サラブレッドの気性の問題は本当に厄介だ。
気性難の馬がある程度いることは避けられない。
ドゥラメンテも気性が激しいことで知られている。
けれどクラシック2冠の偉業を達成した。
これはひとえに堀宣行調教師の手腕に負うところが大きい。
社台・サンデーのベテラン会員ほど厩舎で選ぶ。
気性は調教師の工夫でなんとかコントロールできる場合がある。
レネットグルーヴの19の預託される調教師が気になるところだが、誰が管理することになるのか。
焦点があきらかになってきたところで、本稿の解説は終了としたい。
【人気の理由】【レネットグルーヴの19】話題の馬は走るのか④サンデーサラブレッドクラブ2020募集 終わり
次回から新シリーズ「【サンデーサイレンスの奇跡の血量を持つ馬】①サングレアルの19(牝)」をNOTEのほうで始めます。
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