(1)アストンクリントンは未勝利戦デビューも4着
本日(2020年3月15日)、サンデーサラブレッドクラブのハーツクライ産駒アストンクリントンが中山5レース3歳未勝利戦でデビューして、4着(3番人気)と馬券圏を外した。
この馬の母はアスコルティ(2011年生まれ、父Danehill Dancer)、祖母はリッスン(2005年生まれ、父Sadler’s Wells)。
このリッスンは2007年のイギリスG1フィリーズマイル、2007年もアイルランドのG1モイグレアスタッドステークス(7ハロン、約1408メートル)に2着するなどした欧州のマイラーで、全姉のSequoyah (1998年生まれ、 Sadler’s Wells) はリッスンが敗れたそのG1モイグレアスタッドステークスに優勝した、世界的な良血。
このリッスンの血を引くアストンクリントンは血統面と名前でレース前から注目された。
しかし、デビュー戦は直線の叩き合いで劣勢となり、後ろからきた牝馬のヒューマンコメディに差された。
このヒューマンコメディもアストンクリントンと同じハーツクライ産駒。
アストンクリントンが2018年、サンデーサラブレッドクラブから1口100万円(総額4,000万円)で募集されたのに対して、勝ったヒューマンコメディは2019年の JRAブリーズアップセールにて1,512万円 で競り落とされた馬。
競馬の勝ち負けは馬の値段=血統で決まるわけではないが、特にハーツクライ産駒は馬の値段=血統が裏切られる。
ヒューマンコメディの母はチョコレートリリー (2010年生まれ、父ウォーエンブレム)で、本馬は3番仔。
上の2頭は中央未勝利で、一族を見るとおばのムードスウィングス (牝馬、2011年生まれ、父ハーツクライ) が1勝、おじのラヴィンライフ (牡馬、2006年生まれ、父ゴールドアリュール) とラフィングインメイ (牡馬、2009年生まれ、父ロージズインメイ) がともに3勝したぐらいで、実績的にはほとんど目立たない血統だ。
(2)サンデーサラブレッドクラブの良血ハーツクライ産駒の成績
このハーツクライ産駒ほど選馬に難しいものはない。
というのは、これまでサンデーサラブレッドクラブで良血、高額のハーツクライ産駒が多く募集されてきたが、そのほとんどが期待外れの状態にある。
そんな馬を列挙すると以下の3頭がこれに該当する。
・ジンゴイスト(牡馬、2015年生まれ、母ラヴズオンリーミー):1口250万円(総額1億円)、兄リアルスティール (牡馬、2012年生まれ、父ディープインパクト)G1ドバイターフ優勝
・バイキングクラップ(牡馬、2016年生まれ、母マジックストーム):1口250万円(総額1億円)、姉ラキシス (牝馬、2010年生まれ、父ディープインパクト) G1エリザベス女王杯優勝、兄サトノアラジン (牡馬、2011年生まれ、父ディープインパクト) G1安田記念優勝。
・シュヴァルツリーゼ(牡馬、2016年生まれ、母 ソベラニア):1口125万円(総額5,000万円)
一方、サンデーサラブレッドクラブで募集されたハーツクライ産駒の馬たちで活躍馬した馬は以下のように、価格的には低~中価格帯の馬ばかりだ。
・フェイムゲーム(牡馬、2010年生まれ、母ホールオブフェーム):1口90万円(総額3,600万円)、兄バランスオブゲーム(牡馬、1999年生まれ、父フサイチコンコルド):G2目黒記念など重賞6勝。
・マジックタイム(牝馬、2011年生まれ、母 タイムウィルテル ):1口40万円(総額1,600万円)、G3ダービー卿チャレンジTなど重賞2勝。
・タイムフライヤー(牡馬、2010年生まれ、母タイムトラベリング):1口65万円(総額2,600万円):G1ホープフルステークス優勝。
また、社台・サンデーのクラブ馬以外で活躍したハーツクライ産駒を見ても、ジャスタウェイやウインバリアシオンのように、上があまり走っていず、血統的に超良血馬でなくても、したがって高額馬でなくてもめざましい競走成績をあげる馬もいる。
(3)ハーツクライ産駒の1歳募集時の馬体を比べる
●良血&高額馬
●低~中価格帯の活躍馬
結果論になるが、こうして非活躍馬、活躍馬の6頭の写真を並べてみると、どの馬も遜色(そんしょく)がなく、見栄えがする好馬体だ。
1歳募集時には、上の良血&高額馬3頭が飛びぬけてよく見えたが、これは血統と価格という先入観で見ていたからで、冷静に眺めれば、下の低~中価格帯の活躍馬の出来も素晴らしい。
私たちの消費生活では、安かろう悪かろう、逆に有名で人気にある商品は高くても、並んでも買うというブランド意識が染みついている。
1口馬主でもこのような意識で馬を見る習慣がついてしまっている。
有名(良血)でなくても、安くていい商品(競走馬)はたくさん存在する。
今日のハーツクライ産駒アストンクリントンの敗戦とヒューマンコメディの勝利はこんな当たり前のことを改めて気がつかせてくれた。
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