(1)世間ではAIが隆盛しているけれど
ネットの競馬予想記事スポニチ・アネックスで、ダービーのAI予想を偶然目にした。
AIではサートゥルナーリアを本命に指名している。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190526-00000118-spnannex-horse
AIという言葉は巷(ちまた)にあふれているけれど、みなさん、AIってどんなものかご存知だろうか?
これはディープラーニング(深層学習)を特徴とする技術だ。
初めは画像解析からスタートした。
大量の画像、たとえば自動車の画像をコンピュータに読み込ませて、これをトラックや乗用車といったように区別して認識させる。
トラックや乗用車の特徴や定義を予めきっちりと教え込むのではなく、トライ&エラーを通して機械に自己学習させるというものだ。
2020年を目標に自動車の自動運転実現に向けて技術開発が進んでいるが、このAI技術が基礎となっている。
また、将棋や囲碁などの世界でもAIはプロ棋士を破るなど画期的な成果を挙げている。
AIが人間を超える特異点をシンギュラリティと言うが、ボードゲームではすでにこの事態が招来している。
競馬予想でもボチボチAI予想の言葉を目にするようになったが、成績はまだ発展途上のようだ。
正直、AIによる競馬予想には疑問だ。
以下、私が考える疑問点を書く。
(2)馬鹿な教師が教えた生徒は馬鹿
第一に、プログラマーの問題だ。
精度の高い競馬予想AIを作成するのは、技術の面で優秀なプログラマーであることは大前提だ。
加えて、競馬予想にも通じていなければならない。
この2つの条件を満たした人物が果たして存在するのか?
どうしてもAI技術者は最先端の産業分野で奪い合いの状況にある。
言い方は悪いが、競馬予想のような下卑た分野に優秀なAI技術者が降りてくるか。
AIによる競馬予想では初期設定が重要になる。自動学習とは言え、初めはプログラマーが競馬予想の基本を機械に教え込まなければならない。
直截的な言い方をすれば、教師(プログロマー)が馬鹿であれば、生徒(AI)も馬鹿になる。
(これは一般論で書いています。スポニチ・アネックスで、ダービーのAI予想のプログラマーを指すものではないので、ご了解ください)
(3)競馬予想には不確実性が多すぎる
競馬予想には基となるパラメーターが多すぎる。
AIを単純化すれば、事象を数式で表すことだ。
血統、騎手、厩舎、生産者、馬主、成績、性別、馬齢、競馬場、コース、距離、持ちタイム、上りタイム、レースラップ、脚質、レース展開、馬場状態、斤量、ローテーション、調教、パドック、返し馬、枠順、オッズ等々。
こうした要素をどのように数値化するのか。
軽重の付け方が難しい。
レースによっては枠順が結果に大きく影響するときがあれば、馬場状態の得意不得意で本命馬が消えて穴馬が台頭することもある。
馬場状態ひとつ取ってみても、JRA発表では良、やや重、重、不良の4段階で表示しているが良発表でも実際は重に近いなど、コース状態は乗っている騎手にしかわからない微妙なものがある。
つまり上記の数値の多くは固定値ではなく、日々刻々変化している。
競馬を構成する事象は不確実で流動的な要素の集積で成り立っており、これは数式で単純に順位付けできるものではない。
第一、競馬予想で重要となるパドックや返し馬をどうやって数値化するのか。
これは、パドックを見た人間の評価をその都度盛り込むことになるが、プロのパドック解説者ですら誤ることが多い。
(4)コンピュータ予想は消去法
しかし。
以前、コンピュータを用いた競馬予想で億単位の利益を得た人が、税金を支払わずに国税局から追徴課税を求められて裁判になったニュースがあった。
ハズレ馬券が経費にあたるかどうかで争い、予想家が実質勝訴した。
あの予想ではAI技術は使われなかったようだが、優秀なプログラマーが参入すればAIによる競馬予想が将来、良績を挙げる日もやってくるだろう。
確か、あの馬券裁判の人の予想は、レースで絶対にこない馬を抽出して、来る可能性のある馬の組み合わせを全部買うという方法であったように記憶している。
だから莫大な金額のハズレ馬券が発生した。
AI予想を代表とするコンピュータでできるとしたら、勝ち馬予想ではなく、こない馬を予想してそこから消去法で当たり馬券を析出する方法だろう。
ただ、それには莫大な資金が必要となる。
よく競馬予想屋で1点勝負などという触れ込みで客を集める広告を見かけるが、そんなことは不可能だ。
ともあれ、AI予想が人間の予想を超えるシンギュラリティが到来するのはまだしばらく先のことだろう。
それまでは、ポンコツの頭脳を駆使してニンゲンの代表としてシコシコと競馬予想を続けてゆくつもりだ。
まだ機械には負けていられない。
👇ランキングをクリックしていただければ幸いです。