【タイムトラベリングの2019】2020年募集馬注目クロス④G1編<第2回>

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(1)はじめに

G1サラブレッドクラブ2020年募集馬リストのなかで、注目クロスを持つ馬を取り上げて解説をしている。

前回はヌレイエフのクロスを持つ【レッドサンの2019】について取り上げた。

あまりヌレイエフのクロスにばかりこだわって書くのは読むほうも飽きる。

ということで、今回は少し変わった馬のクロスを持つ募集馬を紹介したい。

【タイムトラベリングの2019】はAlzao (アルザオ)の 3 × 3(25.00%)という珍しいクロスを持つ。

Alzao (アルザオ)というと、ディープインパクトの母父としてよく目にする種牡馬の名前だ。

しかし、競馬ファンのみんさんもアルザオの名前はディープインパクトの母ウインドインハーヘアの父として名前はよく知っていても、それ以外の情報となると、よほどの血統愛嬌者でない限り皆無に近いのが実情ではないだろうか。

Alzao (アルザオ)は12戦4勝で、そのうち重賞勝ちはG3エリントン賞の1勝のみ。

競走馬としては、地味な存在であった。

しかし、種牡馬になってからは15頭のG1優勝馬を出した。

産駒の活躍馬には牝馬が多く、フィリーサイアーとみなされている(亀谷敬正『勝ち馬がわかる血統の教科書』池田書店 106-107ページ)。

ディープインパクトの母ウインドインハーヘアもドイツのアラルポカルを勝ったれっきとしたG1馬なので、なるほど牝馬との相性はいいということは納得できる。

しかし、今回紹介する【タイムトラベリングの2019】は牡馬だ。

このあたりをどう評価するかなど、難しい問題を初めに提起してみる。

(2)タイムトラベリングの2019の血統評価

まずはタイムトラベリングの2019の5代血統表から見てみよう。

先述したように、本馬(タイムトラベリングの2019)の父ディープインパクトの母父がAlzao (アルザオ)だ。

また、母のタイムトラベリングの母父がAlzao も(アルザオ)になり、Alzao (アルザオ)の 3 × 3(25.00%)という貴重なクロスが現出している。

母のタイムトラベリングは2004年生まれで、2005年に社台サラブレッドクラブから1口50万円で募集された。調教師は松田博資 (栗東)。

この馬の全兄がタイムパラドックス (牡馬、1998年生まれ、父ブライアンズタイム) ということで、募集時に注目された。

タイムパラドックスといえば、10勝のうち、中央G1がジャパンカップダートの1勝で、地方では、川崎記念、帝王賞、JBCクラシック(2回)とG1を4勝して、めっぽう強かった。ほかにダート重賞としてはブリーダーズゴールド(G2)、平安S(G3)、アンタレスS(G3)、白山大賞典(G3)などの勝ち鞍がある。

このような血統背景もあってタイムトラベリングは期待されたが、4戦目の小倉未勝利戦の牝馬限定線戦(ダート1700m)を勝ち上がるも、その後に勝ち星に恵まれず、8戦1勝 [1-1-0-6]の成績で引退、繁殖入りした。

思うに、馬体重が420~30キロ台の小さい馬で、非力な牝馬は昇級後の混合戦で、牡馬を相手に互角以上に戦うのは難しかったようだ。

このようなレースに行ってイマイチでも、血統背景の良い牝馬は繁殖にいってから優秀な仔馬を産む。

6番仔にG1ホープフルステークスを優勝したタイムフライヤー (牡馬、2015年生まれ、父ハーツクライ)を輩出した。

このタイムフライヤーはダート重賞のG3武蔵野ステークスにも2着にきているので、やはりおじのタイムパラドックスという血の流れはあなどれない。

こうしたダート血統が本馬にも受け継がれているのなら、牝馬ではなく、牡馬に出たということは強みになる。

それにしても、本馬はディープインパクト産駒だ。

ディープインパクトの仔で強いダート馬が生まれる、というのもピンとこない。

いろいろな意味で判断に迷うのがこの馬だ。

(3)Alzao (アルザオ)のクロスを持つ馬を探す

やはり本馬(タイムトラベリングの2019)の取捨のポイントはAlzao (アルザオ)の 3 × 3(25.00%)の濃いクロスをどう見るか、という点だろう。

ほかにAlzao (アルザオ)のクロスを持つ馬を探してみた。

まず、ロードホースクラブの2歳の牡馬ロードリスペクト(リュヌドサーブルの2018)がこれに該当した。

この馬の5代血統表を下に掲げる。

ロードリスペクトの場合、ディープインパクトの仔のキズナが父になっているため、タイムトラベリングの2019(父ディープインパクト)よりも1世代進んだ結果、Alzao(アルザオ)の4 × 3(18.75%)のクロスとなっている。

ロードホースクラブでこの馬のカタログコメントに面白い記述を見つけた。

本馬はアルザオ4×3のクロ スを保有。このクロスはディープインパクト産駒のアルザオ3×2 で仏重賞勝ち馬も出ていて、爆発力を秘めた配合と言えます。

https://www.lord-to.co.jp/pdf/1814.pdf#search=%27Alzao+%EF%BC%88%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B6%E3%82%AA%EF%BC%89%E3%81%AE%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B9%27

「このクロスはディープインパクト産駒のアルザオ3×2 で仏重賞勝ち馬も出ていて」

???

何と言う馬か?

調べてみた。

2012年4月30日に4歳牝馬(当時)でディープインパクト産駒のAquamarine (アクアマリン)がフランスのG3アレフランス賞(芝2000m)に優勝している。

これがロードホースクラブのカタログに書かれている馬だ。

9頭立ての8番人気を覆してのものだ。

ちなみにこのときの2着がハヤランダ(Haya Landa)。

サンデーサラブレッドクラブの3歳馬で先日新馬戦を勝ったノーウェアランド (牡 2017 鹿毛 ディープインパクト)の母だ。

さて、Aquamarine (アクアマリン)の5代血統表も掲げる。

こちらは、Alzaoの3×2(37.50%)という、さらに血の濃いインブリードとなっている。

欧州では3×2のようなクロスを持つ重賞勝ち馬が少なからずみられる。

サドラーズウェルズの3×2(37.50%)を持つエネイブルの例は有名だが、古くはFlying Fox(1899年のイギリス三冠馬)や Ksar(凱旋門賞を2回優勝)などが知られる。

なぜ欧州に大レースを勝つ3×2(37.50%)の馬が日本に比べて少なくないのか。

その答えは後日、NOTEの「1口馬主講座」の特集「インブリード考(仮題)」でじっくりと書いてみたい。

https://note.com/soumanosuikoden

(4)まとめと結論

そろそろまとめに入る。

本馬(タイムトラベリングの2019)よりもさらにインブリードが強いAlzaoの3×2(37.50%)のAquamarine (アクアマリン)がフランスの重賞競走に優勝している。

これは心強いデータだが、いかんせんAlzaoの産駒は牝馬に活躍馬が多く出ている。

このAquamarine (アクアマリン)の事例もそうした観点から説明できるかもしれない。

あいにくタイムトラベリングの2019は牡馬だ。

さらに、本馬の姉のタイムハンドラー (牝馬、2016年生まれ、父ディープブリランテ)も同じAlzaoの4 × 3(18.75%)のクロスを持つ。

タイムハンドラーはサンデーサラブレッドクラブから2017年に1口30万円で募集されたが、成績は7戦0勝 [0-0-0-7]とふるわない。

タイムトラベリングの2019の姉、タイムハンドラー

アルザオ産駒やアルザオの濃いクロスを持つ牝馬は活躍する傾向にあるのではなかったのか?

父がディープブリランテというマイナス材料もあるが、なんともこころもとない。

それでも兄がタイムフライヤーという事実も一方にはある。

ウーン、とても迷う。

馬券もそうだけれど、迷ったらケン。

これが勝負ごとの鉄則かもしれない。

【タイムトラベリングの2019】2020年募集馬注目クロス④G1編<第2回>終わり

(1)はじめに G1サラブレッドクラブ2020年募集馬リストのなかで、注目クロスを持つ馬を取り上げて解説をしている。 前回はデ...

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