(1)はじめに
社台・サンデーサラブレッドクラブ2020年募集馬リストのなかで、注目クロスを持つ馬を取り上げて解説をしている。
前回は社台サラブレッドクラブ募集馬でサンデーサイレンスの3×3のクロスを持つカレンリスベットの2019について書いた。
そしてサンデーサイレンスに限らず、強いクロスの配合の馬は競走馬としての期待というよりも繁殖牝馬、牡馬の血統背景として評価すべきだという見解を書かせてもらった。
今回取り上げる牝馬の【フレジェールの2019】は、3×2や3×3といった強いクロスを持ってはいない。
ロイヤルスキーの4 × 4(12.50%)という、今まで見てきた馬たちよりも穏やかなインブリードだ。
それでは、なぜこの馬を取り上げたのか、というと珍しいロイヤルスキーのクロスを持つということのほかに、もうひとつ理由がある。
それは、この馬の母フレジェールがロイヤルスキーの3 × 3(25.00%)という強いクロスを持つことだ。
このような牝馬が繁殖にあがった場合、その子どもたちから走る馬が出ることがある。
今日はやや変則になるが、まず本馬(フレジェールの2019)の母フレジェールの5代血統表から見ていくことにする。
(2)フレジェールの血統評価
●フレジェールの5代血統表
フレジェールの父アグネスタキオンの母父はロイヤルスキー。
一方の母スキーパラダイスの母父もロイヤルスキーということでロイヤルスキーの3×3のクロスが完成だ。
ロイヤルスキーはアメリカの競走馬。2歳時にはG1ローレルフューチュリティなど重賞を3勝した。
種牡馬としては、G1桜花賞優勝馬のアグネスフローラやエイコーンステークスの勝ち馬Ski Goggle(スキーパラダイス、スキーキャプテンの母)が出た。日本では、とりわけ社台グループではなじみの深い種牡馬だ。
フレジェールのおいがG1皐月賞を制したキャプテントゥーレ (牡馬、 2005年生まれ、父アグネスタキオン) ということで社台との縁(えにし)が了解される。
・ゴールデンチケット (牡馬、2006年生まれ、父キングカメハメハ) G2兵庫チャンピオンシップ優勝
・ロワジャルダン (牡馬、2011年生まれ、父キングカメハメハ) G3みやこステークス優勝
・アルティマトゥーレ (牝馬、2004年生まれ、父フジキセキ) G2 セントウルステークス、G3シルクロードステークス優勝。
このスキーパラダイスを起点とする牝系からは、社台サラブレッドクラブの活躍馬が目白押し。
最近でこそ、社台ファームの低迷という事情もあり活力を失っているが、競走馬は母系で走るという格言に従えば、このフレジェールの子どもたちからいまも目が離せない。
(3)フレジェールの2019の血統評価
次に本馬(フレジェールの2019)の5代血統表を見てみよう。
母フレジェールの持つロイヤルスキーの濃いクロスの血がエピファネイアを掛け合わせることで、ほどよく調和されている。
ロイヤルスキーの血は直仔でも優れた能力を遺伝するが、母系に入るとパワーを発揮する。
試みにロイヤルスキー産駒で獲得賞金1億円以上を稼いだ馬を数えると10頭。
対してブルードメアサイアーで数えると18頭にものぼる。
本馬の母父はロイヤルスキーではないが、母系にこの馬の血をインブリードされていることから併せ考えると、心強いデータとなる。
母フレジェールは社台のオーナーズ募集馬で、競走成績は15戦2勝 [2-3-2-8]。
本馬はフレジェールの6番仔にあたる。
上の5頭もすべてロイヤルスキーの(4 × 4)12.50%のクロスを持つ。
以下にきょうだい達の競走成績を掲げる。
・ブレヴァン(牡馬、2011年生まれ、父ホワイトマズル)中央未勝利
・エバーキュート(牝馬、2012年生まれ、父チチカステナンゴ)4勝
・サウンドパラダイス(牝馬、2013年生まれ、父ワークフォース)1勝
・フィルストバーン(セン馬、2016年生まれ、父エイシンフラッシュ)2勝
・フロントフリップ(牡馬、2017年生まれ、父ノヴェリスト)中央現役、3歳
5頭中3頭の勝ち上がり。
産駒の成績としてはまずまずだ。
ロイヤルスキー産駒は早熟で仕上がりが早いことが特徴で、2歳戦・3歳戦から活躍する。
このクロスがいいほうに向かえば、本馬はおもしろい存在になる。
しかも、父は初年度産駒から早くも牝馬クラシック馬のデアリングタクトを出したエピファネイアだから、この馬も牝馬ということで、楽しみが広がる。
(4)まとめ
4×3や4×4のクロスはちょうどうまい具合にバランスが取れているインブリード配合といえる。
狙いとする祖先の名馬の血をグッと集めて凝縮させた母馬のエキスはこれだけでは濃すぎて飲めない。
この原液に、父の血のポテンシャルをうまくブレンドすることで、香り立つちょうどよいテイストの競走馬が誕生する。
4×3(18.75%)がまさにこうした意味でのベストマッチの配合パターンとしてこれまで喧伝されきたのも頷ける。
本馬(フレジェールの2019)はロイヤルスキーの4×4で、奇跡の血量ではない。
しかし、サンデーサイレンスの4 × 3(18.75%)のクロスも持っている。
父系はスペシャルウィーク、母系はアグネスフローラに由来する。
このクロスは、ともするとサンデーの激しい気性が災いする。
しかし、うまくはまればこの気性が爆発力や勝負強さを生むだろう。
この馬の上で未勝利なのはいずれも牡馬。
牝馬はすべて勝ち上がっている。
ということで、過度な期待は慎まなければならないが、本馬(フレジェールの2019)は育成や調教が順調なら、勝ち上がりは保証できる、そんな評価になるのかと思う。
【フレジェールの2019】2020年募集馬注目クロス③社台編<第5回>終わり
次回から2020年募集馬注目クロスG1サラブレッドクラブ編が始まります。
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