(1)アドマイヤビルゴはセレクトセール史上2番目の高額馬
本日(3月21日[土])、阪神11レースの若葉ステークスを武豊騎乗の1番人気アドマイヤビルゴが後続に2馬身の差をつけて快勝した。
追い出されてからの反応は抜群。
スルスルと加速して余裕をもっての勝利だった。
この馬(上場馬名イルーシヴウェーヴの2017)はセレクトセール2017の当歳馬セッションにて5億8000万円で近藤利一オーナーに落札された。
5億8000万円は史上2番目の高額にあたる。
従来、セレクトセールの高額馬は走らない、と言われてきた。
しかし、2017年のセレクトセールは様相が違う。
先日の弥生賞では、サトノフラッグ(牡馬、父ディープインパクト)が同じ武豊を背に弥生賞を勝利した。
この馬はアドマイヤビルゴと同じセレクトセール2017の当歳セッションで「バラダセールの2017」という名前で上場され、1億6,500万円の値をつけて里見治氏によって落札された。
1億6,500万円の購買額は7番目の高値にあたる。
このセレクトセール2017では、競り値が高額で落札された馬たちが次々とクラシックのステップレースである3歳重賞やをトライアルを勝っている。
ちなみに1歳馬セッションで1億6,000万円の購買額で(株)DMM.com によって落札されたヴズオンリーミーの2016、競走馬名ラヴズオンリーユー(牝馬、父ディープインパクト)は2019年のオークスに優勝していることも記憶に新しい。
セレクトセール2017において高額で取引された馬たちの2020年3月1日時点での成績については、以下の記事で記した。
(2)アドマイヤビルゴのセレクトセール落札時のコメント
5億8000万円の取引額は当時、大きな話題を呼び、マスコミ各紙で取り上げられた。
落札した近藤利一氏とトレーナーの友道師が語った当時のコメントを以下に引用する。
【近藤利一オーナーのコメント】
「オーラ、品があって、下見の段階でどうしても欲しいと思った。(競合)相手はある程度分かってましたが、何としてもとりたかったですね。スターになってもらわないと困るし、非常に楽しみ。最初から友道先生に預けるつもりと決めていました。昨日もだけど、友道先生から、何があっても諦めないで欲しいと言ってきたし、日本に残したいという想いに応えたつもり。何よりも無事に走れる事が一番で、あとはその馬の才能。ダービーや凱旋門は、今の段階では考えてません。
5億か6億くらいと思っていたので、想定内ですが、途中で興奮し過ぎて、金額がよく分からなくなっていましたよ。1億だろうが、10億だろうが、意地ってのがあるからね。トレーナーも私も一番気に入っていた馬だし、みんなに好かれるような馬になって無事に走ってほしい」
【友道康夫調教師のコメント】
「血統もそうだけど、動きや雰囲気は一頭だけ抜けていた。動きがスムーズで落ち着きもありますね。折り合いもつきそうで、ジョッキーも乗りやすいんじゃないですかね。2400はバッチリだと思います」
「競馬ラボ」2017年7月11日の記事より引用させていただきました。
https://www.keibalab.jp/topics/33573/
(3)アドマイヤビルゴの血統・馬体評価
セールでの競走馬の価格は競り値によって形成されるものだから、そのときの状況によって価格はいくらでも吊り上がることがある。
このときは近藤利一氏は里見治氏と競り合っていた。
購買力では、馬主の一二を争う両氏だから、ともに意地を張って一歩も引かずという状態になった。
札束の空中戦が展開されれば、このような価格もつく。
だから、購買額がそのまま馬の能力に直接結びつかないのは、当然だ。
それにしても、近藤、里見の馬主界のある意味での双璧がほれ込んだこの馬の魅力とは何だろう。
育成段階でのコメントを引用させていただきたい。
以下は、ノーザンファーム早来の木村厩舎(牡馬)林宏樹調教主任の談。
「体も小さいし、まだ馬体も緩いんだけど、ヴィルシーナ17や他の馬が苦労する時計を、いとも簡単に叩き出しています。競走能力は相当高いんだろうね。それだけ能力を感じるだけに、もっとこうなってほしい、ああなってほしいという欲が出てしまいます。デビューは秋頃をイメージしています。これから子どもっぽさが抜けていく時期だと思うので、順調に成長していってほしいですね」
『JRA-VAN』の「POGの王道2019-2020年版ノーザンファーム早来 厩舎リポート」より引用させていただきました。
https://jra-van.jp/fun/pog2019y/05.html
セレクトセール当時から、この馬の動きの良さを友道師も指摘していたが、身体能力のポテンシャルの高さは林主任の談和からもうかがい知ることができる。
ただ、いかんせん馬体が小さい。
アドマイヤビルゴの新馬戦は434キロの馬体重で、若葉ステークスでは4キロ減って430キロの馬体重で出走した。
1月27日の早生まれにしては、この体重は小さく、馬体は幼い。
本来、小さい馬はセールでも1口馬主でも敬遠される傾向にあるのだが、この馬が超高額の記録となったのには、動きの良さに加えて血統的な価値にある。
アドマイヤビルゴの母のイルーシヴウェーヴは2009年、フランスのG1プール・デッセ・デ・プーリッシュ、いわゆる1,000ギニー(芝1600m)を勝った名牝で、兄のサトノソロモンもこの血統を評価され、2016年のセレクトセールで2億8,000万円で里見治氏によって落札された。
このフランス1,000ギニーからはあの女傑ザルカヴァ(牝馬、2005年生まれ、父Zamindar、2008年の勝ち馬)を輩出している。
近年、社台グループは1,000ギニー優勝馬を狙い撃ちして購入している。
アドマイヤビルゴの母イルーシヴウェーヴはアイルランドで2頭産んだのち、フランケルの仔を受胎した状態でノーザンファームに購買された。
2014年の勝ち馬アヴニールセルタン(牝馬、2011年生まれ、父Le Havre)と2016年の勝ち馬ラクレソニエール(牝馬、2013年生まれ、父Le Havre)は社台ファーム代表の吉田照哉氏によって相次いで購入され、繁殖牝馬として日本にやってきた。
アヴニールセルタンの子どもは1口馬主クラブに回ってきている。
初仔のデゼル (牝馬、2017年生まれ、父ディープインパクト) は2018年に社台サラブレッドクラブから1口200万円(総額8,000万円)で募集され、先日(2020年3月15日)の未勝利戦で武豊騎手の手綱で強い勝ち方をした。2番仔のアヴニールセルタンの2018 (牝 2018 黒鹿毛 ディープインパクト)も2019年に社台サラブレッドクラブから1口175万円(総額7,000万円)で募集され、最近オヌールという競走馬名に決定した。
ここで1口馬主戦略の上で、極めて重要なことを書き添えて置く。
社台ファームの成績が近年、長く低迷し、悲観的な観測が多く流れてきた。
ところが、今年に入って潮目が変わり、現在(2020年3月15日)、馬主部門リーデイングでシルクホースクラブについで2位である。
こうした変化の背景として、社台ファームは欧州から優秀な繁殖牝馬を導入して血統面からも力を入れてきている事実を指摘しておきたい。
今後の1口馬主戦略として、最近輸入された欧州の良血牝馬から産駒を青田買いするという方法がある。
デゼルヤオヌールの出資者はいわばその先駆者といっていい。
(4)アドマイヤビルゴの将来性は?
前章にも書いたように、この馬はまだ小さく、成長途上にある。
デビューも年明けで遅れた。
3月の若葉ステークスで2勝目を挙げて皐月賞の出走が叶った。
今年の3歳の牡馬はシルクのサリオスとノースヒルズのコントレイルの2強が双璧として立ちはだかっている。
ここにスプリングステークスの勝ち馬が加わる。
この強固な壁を突き崩すのは容易なことではない。
二重にも三重にもわたって張り巡らされた強力な布陣を前に、アドマイヤビルゴはどこまで戦えるか。
常識的に考えれば、皐月賞の段階では、成長が追い付かず、勝ち負けを期待してはかわいそうだ、という評価になるだろう。
「ダービーや凱旋門は、今の段階では考えてません」という今は亡き近藤オーナーの言葉にもあるように、ダービーでもかなわない。
本格化するのは秋以降と見るのが一般的な見解になるだろう。
しかし、もし、この常識を覆して本番の皐月賞に勝とうものなら、この馬は同じように小さい馬体ながら「飛んだ」父ディープインパクトの再来になる予感もある。
この馬の5億8000万円の価格がそれに見合ったものなのか。
近藤利一氏の最後の相馬眼が伝説となって語り継がれる日が来るのか、競馬ファンのひとりとして今後のアドマイヤビルゴから目が離せない。
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