「セレクトセール2018」が終了した。
初日・1歳馬セールと合わせた2日間トータルでは、史上最高だった17年の173億2700万円を上回る179億3200万円で、新記録達成となった。
結果一覧を見ると、気になる言葉がある。
主取(ぬしとり)という聞きなれない文字だ。
これは2つのケースで用いられる。
(1)セリ取り引きで出場した馬に買い手がつかない。
(2)価格が販売者の希望価格に達しないとき、生産者が値段をつけて引き取る。
(1)のケースはセリに参加した買い手(主に馬主)が馬そのものにダメ出しをした。
(2)のケースは買い手がその馬を高値で買う価値が(費用対効果)がないと判断した。
ということで、いわば馬を見切ったことになる。
こうした主取馬は売れ残りと呼んでよい。
1口馬主の社台・サンデーのサラブレッドクラブでは、こうした売れ残りの馬からも重賞勝ち馬が輩出する。
つまりは、1口馬主の会員の多くは、相馬眼が未熟、ということだ(当然、この私も)。
それでは、セレクトセールに参加している馬主に相馬眼があるか?
これを考えるアプローチの1つとして、この主取馬がその後、活躍したかどうかを検証すれば答えが出る。
今日は、2008年のセレクトセールの主取馬のその後を調べてみた。
結果を書く前に、まず主取馬がその後、どのような経過をたどるかを述べる。
まず、セレクトセールで買い手がつかない場合、以降に開催されるオークションに上場されることがまれにある。この場合、一番大物取引されるセレクトセールで主取だったというマイナスイメージも手伝って、次のオークションで取引が成立するケースは少ない。
そこで、庭先取り引きで牧場になじみのあるお得意さんの馬主にお願いして買ってもらうという作戦がある。
それでも買い手がつかなければ、生産者が馬主登録をしている場合、自身の所有馬として走らせる。
印象としては、最後の方法が多い。
さて、2008年のセレクトセールは主取馬が多いので、社台ファームとノーザンファーム((有)ノーザンレーシングも含む)に限って見てみることにする。
まず、1歳馬で社台系の生産者の馬が主取になったケースがゼロだった。
さすが、社台グループ。
ある程度成長した1歳馬は、馬っぷりがよくて売れそうなラインナップをそろえて上場した結果の完売だ。
社台グループで当歳馬の主取馬は9頭だった。
うちわけは、社台ファーム6頭、ノーザンファーム((有)ノーザンレーシングも含む)3頭。
一覧表を作成したが、このサイトではうまく乗らないので、「相馬の梁山泊」に【資料】を掲載しました。
合わせてご参照ください。
https://ameblo.jp/aromacandle777/entry-12391256219.html
主取となった9頭の当歳馬のうち、その後1口馬主のクラブで募集された馬は5頭にのぼる。
東京サラブレッドクラブ募集2頭(レッドシルフィア、レッドディーヴァ)
社台サラブレッドクラブ募集1頭(モータウンサウンド)
オーナーズ募集1頭(バシュラール)
ブルーインベスターズ募集1頭(ベネチアブルー)
この5頭中、4頭が中央未勝利または未出走。
地方オーナーズとして募集されたバシュラールだけがわずかに、地方で1勝をあげただけ。
惨憺たる結果だ。
1口馬主の会員はほとんどが素人(個人馬主ではないという意味で)だから、こうした人たち向けに売れ残りの主取馬を混ぜておけということなのか?
むしろ、1口馬主の運営会社オーナーと社台グループの関係で、主取馬を1口クラブ向けに引き取ってもらっている、というのが本当のところだろう。
個人馬主よりも直接の苦情が少ないという理由で。
さて、残り4頭のうち3頭はその後、庭先で取り引きされて、山辺浩氏(ギンザアキレス)、谷掛龍夫氏(ハーバーコマンド)、坂本浩一氏(ロンギングエリー)のもとに売られた。
あとの1頭は生産者自らが走らせるケース(吉田和美氏の所有馬ディンケル)だ。
これらの馬のうち、もっとも活躍したのが、ハーバーコマンドの4勝で、ギンザアキレスの1勝が続き、その他は中央未勝利だ。
ここまで見てきて、社台グループ生産馬で2008年セレクトセール主取馬のほとんどが走っていない(レースで勝っていない)ということがわかった。
当歳馬だけで見てきたが、当歳は馬体よりも血統が判断材料として購入される。
セレクトセールの馬主の相馬眼、特に血統を見る力は相当なものと言っていい。
ただし、社台グループ以外で主取になった馬をすべて検証していないから、最終的な結論は避ける。
ちなみに、坂本浩一氏は、「わんぱく」のあの人だ。
この「セレクトセールの馬主に相馬眼があるか?」は調べていて面白いので、シリーズ化する予定です。
次回の掲載時期は未定ですが、2009年のセレクトセールでまた検証してみようと考えています。