(1)【1月2月生まれ激走説】を復習する
ちょっと古いが、2016年6月23日に姉妹ブログ『相馬の梁山泊』で「競走馬生まれ月の考察~1月・2月生まれの競走馬の激走について」という記事を書いたことがあります。
詳細は以下に貼っておきました。
https://ameblo.jp/aromacandle777/entry-12173624034.html
要点だけを抜き出します。
2015~2016年のクラシック戦線をにぎわした馬たちは,いずれも1月生まれに集中しているのです。
マカヒキ(日本ダービー・1月28日生まれ)
リオンディーズ(朝日フューチュリティ・1月29日生まれ)
サトノダイヤモンド(日本ダービー2着・皐月賞3着・1月30日生まれ)
1月の寒い時期に3頭のライバル馬たちは連続した3日間に生まれている。
ちなみに2012年以降の牝馬のクラシック馬を見てみると、ジュエラー(
桜花賞・1月17日生まれ)、ジェンティルドンナ(2012年牝馬3冠・2月20日)、アユサン(2013年桜花賞・2月21日生まれ)、 メイショウマンボ(2013年オークス・2月25日)、ヌ―ヴォレコルト(2014年オークス・2月25日)と、1・2月生まれの優位は歴然としています。
この事実は偶然ではない。
競走馬の年齢は人間の年齢掛ける3と考えてよく、1月、2月生まれの馬と5月生まれの馬では人間でいうと1歳くらいの開きがある。
3歳春のクラシックでは、1月、2月生まれの馬が早生まれの利点を生かして3月以降に生まれた馬よりも優位に立っているという仮説です。
秋の菊花賞、秋華賞時点では、3月生まれ以降の今も夏に成長して、生まれ月による有利不利がなくなると考えます。
(2)過去6年間のデータで
【1月2月生まれ激走説】検証する
「相馬の梁山泊」で紹介したデータは古いので、2017~2019年度の春の3歳クラシックの優勝馬の生まれ月を調べてみました。
結果は12頭(アーモンドアイが2冠なので実際は11頭)中、1月・2月生まれの馬は6頭。
半数の馬が該当しました。
生まれ月ごとの競走馬の総数がわからないので、この数字を根拠に1月・2月生まれ月の馬に顕著に有利と断言することはできません。
ただ、ダービー馬についてみると、2017~19年の3年連続で1月、2月生まれの馬が勝っている。
ちなみに、2014~16年の度の春の3歳クラシックの優勝馬の生まれ月は以下の通りです。
結果は12頭(ドゥラメンテが2冠なので実際は11頭)中、1月・2月生まれの馬は5頭。
なんとも微妙な数字です。でも、「1月2月生まれ激走説」はダービーにだけあてはまります。
(3)ダービーにだけ
【1月2月生まれ激走説】が当てはまる
この3年間で1月・2月生まれのダービー馬が2頭。ということは、2014~17年の6年間では、1月・2月生まれのダービー馬がなんと5頭もいる。
こ事実は特筆すべきです。
今年(2019年)のダービー出走馬を見ると、1月・2月生まれに該当する馬は、ロジャーバローズ(1月24日)、クラージュゲリエ(2月24日)、ランフォザローゼス(2月14日)、リオンリオン(1月28日)の18頭中わずか4頭。
このデータで買えば、 サートゥルナーリアもダノンキングリーもヴァロックスも消せた。
ロジャーバローズの単勝 9,310円 をせしめることができたのです。
(私はダービー前はこの1月、2月激走説が頭の中から抜け落ちていた!)
(4)1月2月生まれの馬が増えた理由
1月・2月生まれの馬は本当に春のクラシックに強いのか。
単に1月・2月に生まれた競走馬が他の月生まれよりも多いからにすぎないのではないか。
これを確かめるには、馬の各生まれつきごとのクラシックの勝率を厳密に計算しなければYESともNOとも言えない。
だが、社台・サンデーの募集馬カタログを見ていると、1月・2月生まれの馬が
年々増えていることに気づかされます。
つまり、生産者の牧場サイドとしては、何らかの理由で1月・2月生まれの馬を意図的に増やしていることは事実です。
その理由については『相馬の梁山泊』2017年5月27日の記事「競走馬のクラシック成績と生まれ月の相関関係まとめ」で以下のように考察しました。
https://ameblo.jp/aromacandle777/entry-12278304409.html
それでは、なぜ増えたのか、という理由は非常に興味深い。
理由の第一はセレクトセールが1998年から始められたこと。
1・2月生まれの馬は成長分の馬格がよく、見た目の完成度が高い。
だから、高い価格で売れる。
売れても、先に書いたように、青草が少なく、栄養面でのハンデがあって、その後の競走結果に大きく不利に作用すれば、次第に売れなくなる。
それでも1・2月生まれの馬がクラシックで何頭も優勝馬を輩出している。
(5)競走馬の生まれ月が人為的に早期化している
今日、上記の私の考えを裏付ける新聞記事を偶然に見つけました。
『日本経済新聞』2018年12月15日のレーシングワールドの記事で関根慶太郎さんが書かれている「躍進続く3歳馬、その裏に生まれ月の人為的早期化 」という記事です。
以下に貼っておきます。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38828360S8A211C1000000/
この文章の中で、生産者は「ライトコントロール」と呼ばれる手法を用いて電気を照らして発情期を操作していることが指摘されている。ほかには薬剤を使用する方法もあるという。
さらには、秋になっても3歳馬が古馬との混合G1を征するのは、1・2月馬れの馬が古馬と遜色(そんしょく)がなくなったことをステルヴィオ(1月15日生まれ)とルヴァンスレーヴの(1月26日生まれ)例を挙げて述べている。
もし1月2月激走説が3歳秋にも使えるのであれば、馬券戦術の幅が広がる。
この記事は他にもいろいろと有益な情報が紹介されていて、生産者が現在何を考えているかを知る上で大変勉強になるので、一読をお勧めします。
(6)「1口馬主は1月2月生まれの馬を狙え」の結論でいいか?
私は『相馬の梁山泊』では、1月2月生まれの馬を狙え、というようなことを書いてきましたが、いま冷静に考え直して、少し違うものが視界に入ってきました。
生産者の意向としては、「1月2月生まれの馬が活躍する」からという
セールストークで1月2月生まれの馬をセールで実際に高く売っている。
これが単なるセールストークに過ぎないのか、事実に基づくものなのかは、もう少し時間をかけて検証してみる必要がある。
いま私のなかで引っかかっているのは、繁殖牝馬の自然な発情時期をコントロールして、産駒がたとえクラシックなどの重賞競走で結果を出しても、まったく弊害がないのか、という疑念です。
近年社台グループの馬は早熟傾向になっている。
3歳クラシックの時期に活躍しても、古馬になると別馬のように衰えてしまう。早い馬は3歳の夏を越した時点で勝てなくなり早枯れする。
ソウルスターリング(2月13日生まれ)の名前をいま思い浮かべています。
ソウルスターリングのようにG1を優勝すれば、十分もとも取れるし十分でしょう。ですが、1つ勝ちあがっただけで500万下頭打ちになれば、いたずらに維持費コストだけかかり、ストレスも積もります。
いっぽう、イスラボニータ( 5月21日 生まれ)のように遅生まれの馬、つまり繁殖牝馬の自然な発情によって分娩を迎えた馬は古馬になっても末永く活躍できる。
繁殖牝馬の発情の人為操作と産駒の活躍期間の因果関係をこれから調べていこうと思います。
1月2月生まれの馬を積極的に推すのはこの結果が出てからでも遅くない。
そう思います。
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