陰謀論でひも解く日本競馬予想史~タカモト式はトンデモ本

競馬歴が長い人、というより馬券ファンを長く努めていて、馬券オヤジどころか、これを通り越して馬券ジジイ(失礼!)に突入された方なら、タカモト式という言葉に心得があるだろう。
タカモト式とは、高本公夫が開発した馬券戦術である。
いわく、競馬の結果はすべてJRAが先見していて、これを特定の人にわかるように、出馬表等にサインを仕込んでいる。
いわく、レース名など暗号を解くカギを見出せば、すべての競馬の結果は見通せる。
強烈だったのは、中山金杯予想。
金杯だから、金偏の馬が来るという。
事実、6年連続で金偏がきた。

第33回(1984年)優勝馬ドウカンヤシマ(銅カンヤシマ)
第34回(1985年)優勝馬スズパレード(鈴パレード)
第35回(1986年)優勝馬クシロキング(釧キング)
第36回(1987年)優勝馬トチノニシキ(トチノ錦)
第37回(1988年)優勝馬アイアンシロー(アイアン=鉄シロー)
第38回(1989年)優勝馬ニシノミラー(ニシノ ミラー=鏡)

まったく見事と言っていい。
偶然にしても、こうまで金偏の馬が続くと、少しは高本公夫の声に耳を傾けたくもなる。
それから、記憶で書いているから、あいまいで恐縮だが、
確か函館競馬場で開催されたオープン特別か何かのレースで、トウカイ冠号の馬がくることを高本が予想して的中した、というのがある。
その根拠が極めつけだ。日本の競馬場で海が見えるのは函館競馬場だけだ。
トウカイが来る理由はそれだけじゃない。
函館といえば、石川啄木。啄木の残した有名な和歌で

「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」 というのが歌集『一握の砂』に収録されている。

だからトウカイ冠号の馬だ、という。

JRA のしかけたこの暗号(符号)に弟子が気づかなかったと言って、高本はこの弟子を殴ったという。

こうなると、もう無茶苦茶だ。弟子が可哀そう。私は絶対に高本公夫の弟子になりたくない。

ところで、いま私は呉座勇一の『陰謀の中世日本史』(角川新書)を読んでいる。呉座といえば、『応仁の乱』がベストセラーになって一躍、日本史マニアの寵児になった人物。

この『陰謀の中世日本史』は本能寺の変など有名な歴上の事件について、陰謀論の数々を紹介している。たとえば、織田信長が明智光秀に暗殺された黒幕にイエズス会が一枚噛んでいる、という陰謀論があり、これを痛烈に批判している。
歴史ファンにとってはなかなか読みごたえのある内容になっている。

呉座勇一は、陰謀論をさまざまなタイプに分類して論じているが、その中の1つに、結果からさかのぼって、あらかじめ一人の人物の筋書きが用意されていたと、後から牽強付会(けんきょうふかい)する、つまりコジつけるものがある。

タカモト式の中山金杯予想はまさにそれだ。

結果として偶然の符号がある場合、ここに事前のシナリオを想定して、必然の結果と強弁する手法は陰謀論やエセ科学の特徴だ。

地震の予兆として、あとづけで動物の異常行動を探して当てはめることなどもこれに当たる。

タカモト式は現在、サイン馬券として井崎脩五郎などが継承している。

当たる当たらないより、シャレとして面白ければよい、というノリなら全然OKだ。

でも、これを本気で信奉するとなると、ちょっと怪しい宗教の世界に行ってしまっているようで、チト恐ろしい。

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