(1)2つの疑問
前回はサンデーサイレンスの3×3という強いクロスを持つボルドグフーシュの衝撃と、その配合の妙味について思うところを書いた。

ブリックスアンドモルタル、モーリス産駒、ドゥラメンテ 産駒の評判記
前回はサンデーサイレンスの3×3という強いクロスを持つボルドグフーシュの衝撃と、その配合の妙味について思うところを書いた。
おさらいすると、 前回の記事では3つの問題提起をした。
第一に、3×3という濃い血が遺伝病や障害、気性難という悪い影響をもたらして、トタールでレースパフォーマンスを低下させるのではないか、という疑問。
第二にサンデーの3×3 を持つスクリーンヒーロー産駒のうち獲得賞金上位の馬が母父にLayman、エイシンサンディ、サンデーウェルといったサンデーサイレンスの直子でもマイナー種牡馬をつけて、ある程度成功していることの不思議。
第三に、それでは、これらのマイナー種牡馬ではなく、ディープインパクトやハーツクライといった超良血の父を持つ繁殖牝馬を スクリーンヒーロー と掛け合わせたらどうなるか?
この3つの疑問についてこれから考えてみたいと思う。
今回は第一の疑問に答える。
この疑問については、実際に過去にサンデーと社台で募集された スクリーンヒーロー と産駒のうち、
①サンデーサイレンスの3×3 を持つグループ(処理群)
② サンデーサイレンスの3×3 を 持たないグループ(対照群)
2つのグループを比較することで、 サンデーサイレンスの3×3の 持つ有利・不利を統計的にあぶりだすことができる。
まず社台サラブレッドクラブ所属馬のうち、過去に募集された スクリーンヒーロー産駒は14 頭。このうち、処理群( サンデーサイレンスの3×3 を持つグループ )は5頭で、対照群(持たない サンデーサイレンスの3×3 を持つグループ )は9頭。
獲得賞金で比較すると、処理群にボルドグフーシュがいて結果は見えているので、 獲得賞金 ではなく、中央競馬での勝ち上がり率で比較する。
処理群 は5頭中3頭が勝ち上がった。勝ち上がり率は60%。
対照群は9頭中4頭 が勝ち上がった。勝ち上がり率は 44.4%。
次にサンデーサラブレッドクラブでは、 過去に募集された スクリーンヒーロー産駒は4 頭。このうち、処理群( サンデーサイレンスの3×3 を持つグループ )は0頭で、対照群(持たない サンデーサイレンスの3×3 を持つグループ )は4頭。
対照群 しか計算できないが、4頭中1頭が勝ち上がった。勝ち上がり率は25%。
社台とサンデーの所属馬を合計すると、 過去に募集された スクリーンヒーロー産駒は 18頭。
処理群 は5頭 で、 このうち3頭が勝ち上がったので勝ち上がり率は60%。
対照群は13頭で、このうち5頭が勝ち上がったので、勝ち上がり率は38.5%.
以上見てきたように、 処理群 つまり サンデーサイレンスの3×3 を持つグループ のほうが、対象群つまり サンデーサイレンスの3×3 を持たないグループよりも勝ち上がり率が上という結果が出た。
今回は1口馬主クラブ所属馬での比較となり、スクリーンヒーロー産駒全頭での比較ではない。
けれど、以上の事実を見る限り、 スクリーンヒーロー産駒 に限っては「3×3という濃い血が遺伝病や障害、気性難という悪い影響をもたして、トタールでレースパフォーマンスを低下させるのではないか」という心配は杞憂であることがわかった。
むしろ、この強いインブリード(近親交配)は、 サンデーサイレンスの3×3 を持たない馬よりも、良好な競走能力を産駒に与えることが判明した。
1つ疑問が解けたが、まだ謎は残る。
サンデーの3×3 を持つスクリーンヒーロー産駒で「走る馬」が母父にLayman、エイシンサンディ、サンデーウェルといったサンデーのマイナー種牡馬をつけているのはなぜか。
そして、
そして、マイナー種牡馬ではなく、ディープインパクトやハーツクライといった超良血の父を持つ繁殖牝馬を スクリーンヒーロー と掛け合わせたらどうなるか?
次回は、これらの疑問に迫ってみたいと思う。
ちなみにG1サラブレッドクラブ所属馬では、処理群が2頭で対照群が3頭であった。
処理群、対照群ともに勝ち上がり馬はいなかった。
G1の募集馬を提供する追分ファーム生産馬は社台・サンデーの牧場(社台ファーム、ノーザンファーム、白老ファーム)に比べ馬質が低く、育成も劣っている。
その結果が勝ち上がり率に表れていると考えられるので、 スクリーンヒーロー産駒 のサンデーサイレンスの3×3の影響を見るのには、参考にならないという判断から、今回は計算から除外した。
「サンデーのクロスで1口馬主を極める」
https://note.com/soumanosuikoden/n/n5ba64130d2b8